なぜ起業に「アートのマインド」が必要なのか? 孫泰蔵が実感する時代の変化とマスコミの問題

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でも、時代は変わったのです。安くて品質の良いものを作れば売れるかというと、そんなことはないですね。人々はむしろ、たとえ安くて品質が良くても、無駄に資源を費やして作られたモノや、環境を破壊するようなモノ、社会の問題を生み出してしまうようなモノは、受け入れなくなってきました。

今は、どんなプロダクトやサービスでも、「それを、今、世に出す意味」が問われる時代だと思います。

孫 泰蔵(そん たいぞう)/Mistletoe Founder。

日本の連続起業家、ベンチャー投資家。大学在学中から一貫してインターネットビジネスに従事。その後2009年に「アジア版シリコンバレーと言えるようなスタートアップ生態系をつくる」という大志を掲げ、ベンチャー投資活動やスタートアップの成長支援事業を開始。そして2013年、単なる出資に留まらない総合的なスタートアップ支援に加え、未来に直面する世界の大きな課題を解決するための有志によるコミュニティMistletoeを設立。社会に大きなインパクトを与えるスタートアップを育てることをミッションとしている(Photo by Toshimitsu Takahashi)

僕の解釈では、アートとは、「その作品を、今、世に出す意味」が問われるものだと思っています。世の中の問題、社会の課題に向き合い、自分に何ができるか、どんな作品を世に出すべきか。そうしたことに意識的で、そういう意味で「良いモノ」を作り出せる人をアーティストと呼ぶのだと思います。

そして、起業家もそういう人じゃないと、今の時代は、良いプロダクトもサービスも生み出せないし、人々からの共感も得られない。そうすると、マーケットを捉えることも結局できないから、経済的な成功もないと考えています。

ちなみに、アートのマインドが起業に必要なことは、実は今に始まったことではありません。本来起業家は、起業する意味、事業の世の中に対する意味を考えるべきだと思います。ただ、それらをあまり深く考えなくてもうまくいった時期が過去にあっただけで、今は、その原点に、立ち戻りつつあるのだと思います。

若い起業家はキチンと考えている

「起業にもアートのマインドが必要だ」という話をすると「そうはいっても、日本人は、今あるモノを小さくしたり安くしたりすることは得意だが、意味のある商品やサービスを新しく作ることは苦手だ」といったご意見を聞くこともあるのですが、果たしてそうでしょうか。僕はそうは思いません。

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