滞留長いエアロゾルにもやっぱり「マスクと換気」 空気感染が主たる経路と考えられるように

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AERA 2021年9月13日号より(画像:AERA編集部)

昨年、パンデミックが始まった当初は、日本だけでなく多くの国で感染経路は主に飛沫感染と接触感染だと考えられていた。しかし、昨年7月、西村センター長を含め世界の感染症や環境工学などの専門家200人以上が、空気感染の可能性が高いと注意喚起する見解を米感染症学会の学術誌に発表した。

世界保健機関(WHO)はこれを受けて同月、「人の密集した換気の悪い空間で、空気感染が起きた可能性は否定できない」と、限定的に空気感染の発生を認めた。それが今年4月には、感染経路についての説明文を変更し、「ウイルスの含まれたエアロゾルや飛沫を吸い込んだり、それらが目や鼻、口に直接入ったりして感染する」と、エアロゾルを飛沫より先に言及するようになった。

WHOが感染経路に関する見解を修正した背景の一つは、コールセンターや食肉加工工場での集団感染など、空気感染でなければ説明できない感染事例が多数、報告されていることだ。加えて、微小な粒子の空気中の動きや大きさなどを分析する最新技術を使ったさまざまな研究による知見が蓄積されてきた。

屋内で起きやすく、屋外では起きにくい

米科学誌「サイエンス」電子版に8月27日公表された台湾や米国などの研究チームによる総説(解説)は、200本以上の論文を基に、新型コロナウイルスを中心に呼吸器感染症の空気感染についての最新の知見を紹介している。空気感染が当初の想定よりも新型コロナウイルスの感染拡大に寄与していると考えられる理由をこう説明する。

「換気の悪い屋内で感染が起きやすく屋外では起きにくいという疫学データは、空気感染でしか説明できない。飛沫感染や接触感染の起こりやすさは、換気の良し悪し、屋内や屋外という違いに影響されないからだ」

従来は、エアロゾルは直径5マイクロメートル(μm・千分の1ミリ)未満、飛沫は5~100μm程度とされてきた。しかし、新型コロナウイルスの粒子の大きさによる空気中の動態の違いなどを観察すると、5μmではなく、むしろ100μmを境に性質の違いが明確になるため、100μmで線引きするべきだと考える専門家が増えてきた。

100μm以下をエアロゾルと定義するにしても、生じるエアロゾルの多くは5μm以下だという。

以前は、小さなエアロゾルは人工呼吸器の管を抜くといった医療行為で生じるとされてきたが、せきやくしゃみでも出るし、歌う、大声を出す、話す、呼吸をするなどの最中にも発生することがわかってきた。米国の研究チームの実験では、1分間おしゃべりをする間に平均で1千個ほど発生したという。

ただし、感染者から出るエアロゾルや飛沫のすべてにウイルスが含まれるとは限らない。また、含まれるウイルスにいつまで感染力があるのかは、液体成分などによって異なる。

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