ヤンキーの気合い、日本の農業に挑む

バイクからトラクターに乗り換えた男たち

東洋経済オンラインの主要読者である都会の若手ビジネスパーソンの皆さんは、TPPや農協改革の話はニュースで見聞きしても、農業に関心が持ちにくいはず。かく言う私も近年まで恥ずかしながら同様だったが、一昨年の冬、農業関連企業の広報の相談に乗ったのを機に惨状を知って驚いた。

農業が「食」という人間生活、社会、国家の根幹をなすと言えば大げさに聞こえるかもしれないが、これは本当に深刻な問題だ。私と同じゲーマーにも分かりやすいように、ゲームに例えてみよう。

人気ゲーム「信長の野望」をプレイする人は最初に何をするだろうか。いきなり他国へ合戦を仕掛ける前にまずは農地開発で石高を上げて国力を高めているはずだ。日本国の「石高」に当たる農業総産出額は、1984年の11兆7000億円をピークに長期的には減少傾向(2012年は8兆5251億円で前年比微増)。このまま高齢化と後継者不足が進めば厳しいことは誰でも分かる。

ヤンキー魂でグローバルに勝負

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試験養殖中のチョウザメを取り出す田中さん、奥は長山さん

話を田中さんに戻そう。創業時2人で始めたベジフルファームは2年半で、取締役と社員計6人、主婦らのパートと中国・ベトナムからの実習生計15人の体制となり、30ヘクタールの農地に約10のビニールハウスで小松菜やダイコン、ニンジン、カブなどを生産している。面白いのは田中さんら取締役・社員全員が未経験者から始めた点だ。

しかし、だからこそ大胆な試みも次々に打てる。田中さんの“参謀”が取締役の長山衛さん。EC(電子商取引)関連会社で農産物を手掛けていた頃に田中さんと知り合い、現在は都内でIT関連の会社を経営する傍ら、2013年11月から参画した。長山さんの提案で試験的に始めたのがチョウザメの養殖。目的は魚の糞を肥料として活用する循環システム「アクアポニックス」の構築だ。

「キャビアが取れるし、チョウザメで育てた野菜はブランド化できる」。長山さんは、国内では珍しいシステムの狙いについてこう話す。卵を産むまで約7年かかるが、「東京五輪の商機に間に合わせたい」と海外展開もにらむ。2人が現在目を付けているのが富裕層でおなじみのドバイ。欧州産と地元産の野菜で占められるが、日本野菜の品質で割って入る余地があるとみている。昨今話題のマイルドヤンキーは徹底した地元志向だが、田中さんたちヤンキー魂でグローバルに勝負をかけている。

元ヤンキーのインターンも募集中だ。「肉体労働で単純作業の繰り返しの点では気合が必要だし、古臭い義理人情が残る世界。農機具の扱い、メンテナンスはバイク好きと親和性もある。ヤンキーは農業に向いていますよ」。田中さんは熱く語った。

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