ヤンキーの気合い、日本の農業に挑む

バイクからトラクターに乗り換えた男たち

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甘みが自慢の畔柳さんのブルーベリーは子ども達に人気だ(提供写真)

東北の復興にも乗り出す。宮城県気仙沼市では現地の農家とブルーベリー農園とドッグランの複合施設を2年後にプロデュースする計画だ。「私の集大成。被災地の方々を元気にしたい」と畔柳さん。今の農業界については「補助金ありきではなく、マーケティングやITなどスキルアップして収益が上がる産業になれば解決することが多い」と前向きだ。

成功譚に潜む異業種参入のリスク

ここまで書くと異業種参入がバラ色にも見えるが、思わぬリスクがあることも付記したい。民間企業のノウハウや経験を持ち寄ることが“農業イノベーション”の近道なのは確かだが、畔柳さんが数年前の秋、「甘く見ていた」と振り返るのが台風の直撃。風速50㍍の強風に見舞われ、せっかく育てたブルーベリーの木100本がことごとく根元から折れた。シーズンオフで損害は抑えられたが、仮に農園が稼働中の6~8月だった場合、「単純計算で400万円の損失。自然災害への認識を反省した」と振り返る。

そうした天候リスクが破たんの一因になったケースもある。それも昨今、もてはやされる企業参入でだ。「収益が予測できないことはビジネスとして難しい。投資家にも出荷先にも説明できない」。苦渋の表情を浮かべるのは、2000年代半ば、東北地方で異業種参入した企業の元幹部。有機栽培とIT技術を駆使した農法を売り文句に、ベンチャーキャピタルが出資、メディアにも注目されていた。天候リスクは不作だけでなく豊作貧乏もある。他の物づくり事業に比べてもリスク管理の難しさがあった。

販路の見通しも甘かった。農協の販路を活用したが、地域で同じブランドを作り安定供給ができ、まとめ買いしてくれるのが強みの反面、独自農法の武器を使えず差別化が難しくなった。「先にサプライチェーンを確立していれば違った展開になったはず」。補助金が当たり前の農業界では設備も割高。研究開発型のベンチャーといえた同社には障壁は高かった。新規参入したくても農地は地域の農業委員会が認めなければ取得できない。「普通の市場原理は働かない世界。規制を理解せずに普通の市場と同じマーケティングでアプローチする感覚ではダメ」。元幹部はそう述懐する。

最後にこの連載に関して。
私は東洋経済オンラインで、ネット選挙の記事を書き、野球イノベーションの連載を企画したが、選挙と球界と農業は共通の課題を感じる。それは従来の制度が硬直化し、新規参入が少ないことだ。
野球については新規参入があって蘇生の道筋は見えたが、農業はどうだろうか?もちろんリターンの陰にはリスクも多い。私は山下一仁氏のような専門家ではないのでマクロの農業政策や難しいことは勉強中の身だが、農業を知らなかった都会の生活者の目線から、現場で奮闘するイノベーターや若手農家を紹介し、この連載が一緒に日本の農業を考える機会になれば幸いだ。

 

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