ヤンキーの気合い、日本の農業に挑む バイクからトラクターに乗り換えた男たち

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夏の週末は大勢の来客で応対に追われる畔柳さん(提供写真)

「一度しかない人生、好きなことを仕事にしたかった」。起業時を振り返るのは、ブルーベリーファームおかざき代表の畔柳茂樹さん(52歳)。自動車機器でグローバル展開するデンソーで20年余り務めた後、8年前に愛知県岡崎市を拠点にブルーベリーの観光農園を起業した。

デンソー時代は主に電子製品の事業企画部門に所属。2000年当時、鍵穴要らずで車のエンジンをかけるスマートキーの開発に関わり、トヨタのセルシオが国内でいち早く導入。本社から世界各地の拠点の目標状況をフォローするなど、まさに同社中枢で活躍していた。40歳で事業企画課長に就任。順調なサラリーマン生活を歩んでいるはずだったが、「丸一日、世界中とテレビ会議で寝られない日もあった」。激務に追われる日常に疑問を抱くようになり、長年興味があった農業に転身を決意。早期退職制度を使い、割増退職金を起業資金に充てた。

“デンソー流”の生産性思考を持ち込む

農業大学校で基礎を学びつつ、儲かる農業とお客と交流できる場所を目指して観光農園を当初から考えてはいた。ただ、そこはグローバル企業の事業計画経験者。何を作るか模索するうち従来の農業が生産性に関心が低いと気付いた。きっかけは、脱サラの要因になったワークライフバランス重視で、年中栽培に手間がかかる品目を敬遠したことだが、「農家さんは売る発想やコスト意識が薄く、価格も自分で決めていない」。民間企業では当たり前の効率化が遅れていることが逆に大きなチャンスと感じた。機械化やIT化、ブランディングを徹底すればうまく行く――。品目にブルーベリーを選んだのも軌道に乗れば収益性が高く見込めたからだ。

栽培が比較的難しい品目に未経験者が取り組むことに、ほかの農家からは疑問視されたが、「自分で道を拓きたい」。長年企業で培ったビジネスセンスに賭け、目論見は的中。ネット中心に集客して広告費を抑え、訪れたお客には心づくしで歓待する――。創業から数年で1000万の売り上げを超えた。今では稼働が年間実質2カ月で7,000人を集客、年収も1,500万に達した。この成功体験を元に各地でコンサルティングを開始。10月には大学教授らも招いた本格セミナーを初めて行うなど活動範囲を広げている。

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