「バンドマン」が起業で成功しやすい納得の理由 連続起業家が実感する音楽と起業の深い関係

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いろんな個性を持ったメンバーを集め、一緒にバンド活動をしていると、自分たちが作る曲がどんどん変わっていくことがあります。例えば、ベースの人がファンク好きで、すごいファンキーなリズムをやりはじめると、だんだんと演奏する曲のファンキー色が強くなってきたりするのです。そうして集まったメンバーの感性や個性が化学反応を起こし、生み出される音楽が変わっていき、あるときどこかですべてがピシャッと合うと、素晴らしいグルーブが生まれたりするものです。そうした活動や、そこから生まれた作品が、観客にもバンドメンバーにもすごいハッピーな気持ちやノリノリな気分をもたらす。それが音楽という芸術活動の醍醐味です。

このことは起業も同じだと思います。いろんな持ち味や得意技を持つ仲間を集め、コラボレーションしていく中で、今まで誰も見たことがない「うわっ! これはすごいね」「こんなものが世に出たら世界変わっちゃうね」というようなものを作り出す、非常にクリエイティブな行為なのです。

つまりバンド活動の経験がある人は、「どんなメンバーと組めば自分の良さが出せるのか」「どういう環境を作ればチームのメンバー同士が互いに良い化学反応を起こせるか」という、起業でも大切な要素を、すでに経験していることになります。僕も必要な人をリクルーティングするときは、「この子が入るとうちのバンドが面白くなりそうだな」という感じで採用しています。

口より手を動かす

他にも起業に通じる音楽の要諦があります。それは「とにかく手を動かせ」ということ。「議論はいいから、とにかくプレーしよう。話はそれからだ」ということです。バンドをやっている人にとっては当たり前すぎる話ですが、起業家の中に意外と多いのが、議論ばかりしている人、あるいは、リスクの心配ばかりしている人。どちらにも共通するのは、手を動かしていないということです。

もちろん、ビジネスにリスクはつきもので、心配する気持ちもわからないではないですが、議論ばかりしていたり、失敗を恐れて手が止まっているようでは、起業家として話になりません。バンド活動に置き換えてみると、「音楽やろうぜ」と言ってる割に、ちっとも演奏しないようなものです。

なぜバンド活動をしているのか。それは、音楽をやりたいからじゃないでしょうか。「下手な演奏をしたらどうしよう」「無様な楽曲を出したら恥ずかしい」なんて心配して曲も作らず演奏もせず、議論と心配ばかりしているミュージシャンがいたら、それは音楽家と対極の姿勢であり、本気で音楽がやりたいわけじゃないんです。議論と心配ばかりしている人は、バンドでも起業でも、本当は、それほどやりたくない人です。本当にやりたい人は、失敗しようが笑われようが、ガシガシ手を動かして作り続けています。

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