産業リサーチ(自動車) 今後は中国、燃料電池をめぐる争いに

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世界の自動車市場は、年間およそ5750万台前後(2001年)である。このうち北米、西欧、日本の主要3市場だけで、4分の3を占めている。
 2002年は、世界最大の市場・米国でテロ後の販売減少が懸念されたにもかかわらず、1680万台という高水準の販売を記録した。また、いずれ米国に匹敵する大市場に成長すると期待されている中国でも、乗用車の販売が6割も伸びて、120万台に達した。不況で自動車市場が伸び悩んでいる日本や西欧と明暗を分け、自動車メーカー間の競争の焦点となるのが、米国と中国市場であることを改めて印象づけた。
 1998年の独ダイムラー・ベンツと米クライスラーの合併以降、仏ルノーによる日産への出資やGMによるスズキ、富士重工、いすゞへの資本参加など、ここ数年、世界的な再編劇が繰り広げられた。
 その結果、国内に11社ある日本メーカーは、トヨタ自動車とホンダを除いてすべて外資の傘下入りをした。各社が規模の利益を追求する背景には、北米、欧州、アジアの三極に生産・販売網を展開するグローバル化や、燃料電池車、ハイブリッドなど次世代の環境技術への対応があったとみられる。
 その世界再編も一服し、業界は約10グループにほぼ集約された。ただ、業界トップのGMですら、シェアは15%にすぎない。日欧のブランドを次々と買収したフォードは業績不振にあえぎ、世紀の大合併といわれたダイムラー・クライスラーの2002年の業績は急回復したが、合併効果が十分に出ているとは言いがたい。
 むしろ、フランスのプジョー・シトロエンや日本のホンダなど、M&A戦略から一歩引いている独立路線の企業のほうが、経営資源を存分に生かしきっているように見受けられる。
 ここしばらくは、10グループを核にした競争が続くだろう。勝負を決める1つのポイントが、燃料電池車のスタンダードをどこが握るかであり、もう1つが中国市場への参入だ。そして、高い収益性を持つ米国に足場を築ければ、21世紀の「勝ち組」としての立場を不動のものにできるはずだ。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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