一方、アメリカでは、財政政策に関する議論が膠着して、2022年度予算協議の合意が遅れ、法律で定められた債務上限に抵触して年末までに政府機関の閉鎖が再び起きるリスクがある。大統領選挙が行われた2020年同様に、秋にアメリカ政治に起因する不確実性が、株式市場の上値を抑える場面は増えるかもしれない。
だが、民主党の現行の「アメリカ雇用計画」などの歳出規模は、中道派議員への配慮を見せやや規模を縮小させつつ、多少の時間はかかっても、超党派のインフラ法案を除いて、民主党が単独で可決できると筆者は予想している。もともと、アメリカ雇用計画などが議論されている財政政策は長期にわたるメニューであり、短期的な経済成長率に対する影響は限定的なので、株式市場を大きく下落させる要因にはならないだろう。
アメリカの株高の支えもあり、日経平均株価は9月2日に2万8000円台半ばまでリバウンドした。だが日米相対株価(東証株価指数/S&P500指数)の2018年からの低下基調は2021年8月まで続き、戦後最低水準で推移したままである。過去3年以上も続いている日本株市場の劣後は、(1)消費増税による緊縮的な財政政策(2)新型コロナへの対応において財政政策が効果的に発動されていない、の2つが大きく影響していると筆者は考えている。
国内政治の不確実性が株価に与えるリスクの中身
また、2021年4月から日本株停滞が一段と顕著になったが、政治的な不確実性の高まりが影響しているだろう。具体的には、アベノミクス以降の経済復調の土台となった経済政策運営への姿勢が変わり、2012年以前のように財政金融政策が双方ともに、官僚主導で「緊縮方向」に転じるリスクである。
新型コロナの感染再拡大で内閣支持率が低下する中で自民党総裁の任期満了が近づき、政治的な動きが活発になり、自民党の権力構造は一段と流動的になっている。
こうした中で、3日には菅義偉首相が総裁選挙に立候補しないことを表明した。菅首相の続投をメインシナリとしていた筆者にとって予想外の展開である。自民党政治家の権力闘争が激化するとみられ、解散総選挙の結果を含めて情勢は一段と流動的になった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら