「伝説のギタリスト」に学ぶイノベーションの秘訣 歴史的なギター、アイバニーズJEM誕生物語
イノベーションに効率化を求めるな
僕たちはイノベーションにとらわれた時代に生きている。だが皮肉なことに、大半の会社には従業員を自由に遊ばせる熱意が欠けている。遊びが時間とお金を浪費する危険なレシピだと見なされることがあまりに多い。
スタッフやコンサルタントは新たな製品やサービスを開発しろとプレッシャーをかけられ、期限は絞られ、資源は切り詰められ、「クリエイティブ・シンキング・ルーム」とか「イノベーション・ラボ」というありがたくない名前がつけられた部屋の隅に閉じ込められる。そして、「時は金なり」とばかりに、金の浪費は許さないと釘を刺され、妥当性を検討するだけでその日が終わる。
起業家の中にはこうした企業文化に抵抗して、社内にビデオゲーム・センターやボール・プールを設けて、就職志望者やスカウトした人たちに紹介する人もいる。ただこれは善意に基づいてはいるものの誤解を招くアイデアだ。
遊びから得られる最大のメリットは従業員に仕事の間に息抜きさせることではなく、研究と開発の(つまり創造的な)プロセスを活性化させることであり、遊びを優先することは最適化や効率化に反することではない。
直近のプロジェクトに直結するブレイクには至らなくても、自由な遊びには価値がある。創造性を発揮させる余裕をスタッフに与えることで、より画期的でエキサイティング、生活の大切な一部に直結するものが生み出せるのだ。
1951年から1959年まで、マーヴィン・ケリーはベル研究所の所長を務めていた。数年間、彼は科学者やエンジニアに何を探求、開発し、作ろうとしているのかはあえて問わなかった。自由にアイデアを追求しその経過を明確にしてもらえばよかった。彼らが製品を提示するまで、それがどう応用できるかを問うこともない。ケリーには自由な遊びが偉大な設計と製作の土台であることがわかっていたのだ。
そしてまさに彼の考えたとおりとなった。彼の在職期間中にベル研究所はトランジスター、携帯電話の原型、レーザー、通信衛星を発明するのだった。