菅首相、「二階外しで衆院解散」シナリオの大誤算 自民党内で噴出する不満、「三木降ろし」再来も

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自民党が8月後半に実施した衆院選の全国情勢調査でも、「自民の単独過半数確保も危うい」という結果だったとされる。個別に数値を示された自民の衆院選候補者らは「選挙の顔を変えないと落選する」との危機感を募らせ、それが菅首相続投への逆風を加速させた。

菅首相は今のところ、人事刷新による求心力の回復を狙う構えだ。しかし、党内には「国民のための政治を掲げた菅首相が自らの延命のための『個利個略』に走れば、その時点で国民から見放される」との見方が支配的だ。

他人事ではない「三木降ろし」

菅首相が反転攻勢を狙って断行する予定の党役員・内閣改造人事についても、「政権浮揚どころか党内混乱を露呈するだけ」との指摘もある。焦点となる新幹事長についても、野田聖子幹事長代行の昇格や萩生田光一文科相の抜擢、さらには小泉進次郎氏や石破茂氏の名前まで取り沙汰されている。

ただ、一部で浮上した岸田幹事長説は、岸田氏自身が明確に否定。新人事での対象とされる各候補者の間でも「話が来ても断るしかない」との声が相次ぐ。「泥船に乗って一緒に沈みたくない」との政治家心理からだ。このため、政権浮揚に結び付く新体制づくりも難航必至だ。

半世紀近く前に「三木降ろし」と呼ばれた政争は、1975年から1976年にかけて続いた三木武夫首相(当時)の退陣を狙った自民党内の倒閣運動だ。今回と同様、衆院解散か任期満了選挙かをめぐり、三木首相と大派閥領袖の福田赳夫、大平正芳両氏(いずれも元首相)らが熾烈な権力闘争を展開した。

弱小派閥の領袖だった三木氏は持ち前の粘り腰で退陣を拒否し続け、解散断行も試みたが、当時副総理だった福田氏ら15人の閣僚の反対で挫折。結局、任期満了選挙を余儀なくされ、選挙での自民敗北で福田氏に政権を奪われた。

今回は当時と党内事情が異なるが、無派閥の菅首相にとって「三木降ろしは他人事ではない」(自民長老)。手練手管で総裁再選にこぎつけ、衆院選も乗り越えて続投するのか。それとも、総裁選前に出馬断念に追い込まれるのか。今後の展開はまだ誰にも読めない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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