「隕石が地球にぶつかる日」に向けた真剣な実験 地球に照準を合わせている隕石が実際にある
地球に照準を定めている巨大な隕石が、おそらく宇宙のどこかに存在する。実際、候補の1つが科学者によって発見されている。小惑星「ベンヌ」だ。確率は小さいものの、2182年に地球に衝突する危険性がある。相手がこのベンヌとなるのか、別の小惑星となるのかはともかく、問題はいかにして地球との衝突を防ぐかだ。
ある研究者チームは20年近く前から、こうした衝突のシナリオに備えてきた。特別に設計された銃で隕石に繰り返し弾丸を発射し、その反動で隕石がどう動くのか、あるいはどう砕け散るのかを観察してきた。その結果、地球との衝突を回避する目的で小惑星にハイスピードの衝撃を与えたときの反応が見えてきた。
8月にシカゴで開催された第84回国際隕石学会年次総会では、そうした高出力射撃実験の全成果が発表されている。それによれば、小惑星の進路を変えて地球との衝突を避けるには、問題となっている小惑星の種類と、そこに弾丸をぶつける回数がポイントになりそうだ。
壊さないように弾丸を当てる特殊射撃
地球との衝突コースに乗った小惑星に対し、科学者が対策を真剣に検討し始めたのは1960年代。当時有力だったのは、隕石に弾丸のようなものを発射して、地球の大気中で燃え尽きるほど細かな破片に粉砕するアイデアだった、とニューヨーク州立大学プラッツバーグ校の物理学者ジョージ・フリン博士は語る。しかし科学者たちはその後、このように直接的で壊滅的な打撃を実現するのは極めて難しい課題だと認識するようになった。
今では発想が変わり、小惑星に軽い衝撃を与えて進路を変えるアイデアが主流になっている。小惑星にそれよりもずっと小さな物体を意図的にぶつける「キネティック・インパクト・ディフレクション(動力学的衝撃による進路補正)」と呼ばれる手法だ。衝撃によって小惑星の進路をわずかに変化させ、地球にぶつかることなく安全に通過させることを狙っている。