地味に受注急増中!パナソニック「実装機」の正体 5G需要など取り込み生産台数は高原状態が続く

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実装機の新規受注増加の背景には、こうした高性能な実装設備を必要とする企業が増えていることがある。また、米中対立による経済安全保障への対応で、中国から東南アジアに製造拠点を移すなど、サプライチェーン再編に伴う新工場向けの設備の需要増も追い風だ。

パナソニックの梅田博和CFOは5月に行われた決算会見で「情報通信関連の投資需要拡大に応えるため、実装機の増産対応を継続する」と言及。PSFSの寺山副社長も「一時的に落ち込む局面がいずれきても、長期的には成長産業であることは間違いない」と見通す。

生産工程での自動化も支援

パナソニックは実装機事業の拡大に向け、生産管理システムの提供や、各工程の自動化を支援するツールの開発にも注力している。

もともとパナソニックの法人向けシステム事業では、工場などの製造現場の業務効率化支援を手がける。2021年中にもサプライチェーンの効率化を手がけるアメリカのソフトウェア企業、ブルーヨンダー社を約7800億円で買収し、法人向けシステム事業の強化に弾みをつける構えだ。

PCなどを製造するパナソニックのモバイルソリューションズ事業部神戸工場に並ぶ実装設備群(写真:パナソニック提供)

実装機の分野でも、ラインを統合管理できるシステム「iLNB」を開発。従来は他社が手がけたリフロー炉や検査機などを制御するため、1つの実装ラインに複数のコンピューターが必要だったが、「iLNB」では他社設備を含めてライン全体を1台のコンピューターで制御可能にした。

コンピューターを利用して生産における各工程を自動管理するための技術を強化し、競合他社との差別化を図る方針だ。最終的には買収するブルーヨンダーが手がけるサプライチェーンマネジメントの領域と連携して、電子機器の生産を自動で制御できるシステムの構築を視野に入れている。

目下急成長が続く実装機事業は、安定的に業容を拡大できるか。機械そのものの製造・販売にとどまらないビジネスへと脱皮できるかが、カギを握りそうだ。

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逆風の社内で「7800億円買収」の攻防

新社長「就任目前」で買収に同意した胸中

「全責任とる」樋口泰行専務の危機感

「パナ傘下入り」に懸けたアメリカ企業の思惑
 

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。台湾台北市生まれの客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説の研究者でもある。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、アニメが好き。

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