「アクリル板」実は感染対策に逆効果だという衝撃 正常な換気を妨げ、エアロゾル感染増やすかも

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それでも新型コロナウイルスの感染は、主に目に見えないエアロゾルを介して広がっている。アクリル板の効果についての実証実験はまだ少ないが、アメリカとイギリスの科学者が始めた研究では、感染防止に逆効果となりうることがわかってきた。

ジョンズ・ホプキンス大学の研究者が中心となって6月に発表した研究はその1つで、教室に設置された仕切りによって感染リスクが高まることが示された。マサチューセッツ州の学区で行われた研究では、事務局に設置された側面付きのアクリル板によって空気の流れが妨げられていたことがわかった。

さらにジョージア州の学校を対象にした研究では、机に設置した仕切りは、換気の改善やマスクの着用に比べ、ほとんど何の感染予防効果ももたらしていないことが明らかになった。

新型コロナのパンデミックが始まる前の2014年に発表された研究では、パーティションで区切られたオフィスのキュービクルが、オーストラリアで結核が流行した際に感染拡大を助長した要因の1つだった可能性が指摘されている。

咳など大きな粒子には効果があるが…

イギリスの研究者チームは、店舗の客など仕切りの反対側にいる人が話をしたり咳をしたりしたときに吐き出す粒子の動きを、さまざまな換気条件でシミュレーションするモデル研究を行った。その結果は次のとおりだ。

咳をしている場合には大きな飛沫が勢いよく飛んで仕切りにぶつかるため、アクリル板の有効性は高まる。しかし、話をしている場合に吐き出された粒子はアクリル板にひっかかることなく浮遊する。仕切りのおかげで粒子が店員に直接かかるのは防げたとしても、粒子は部屋の中を漂うため、店員などは汚染された空気を吸い込む危険にさらされる——。

「大きな粒子はブロックできても、小さなエアロゾルは仕切りを乗り越えて移動し、およそ5分以内に室内の空気と混ざり合うことが私たちの研究で示された」とリーズ大学(イギリス)のキャサリン・ノークス教授(建築環境工学)は語る。「つまり、人と人との交流が数分以上続けば、仕切りがあったとしても、ウイルスにさらされる可能性は高くなる」。

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