中国のショート動画アプリ大手、快手科技(クワイショウ・テクノロジー)が配信する海外向けアプリの「Zynn(ジン)」が、8月20日をもってサービスを停止することが明らかになった。グーグルの基本ソフト(OS)のアンドロイドやアップルのiOSを搭載するモバイル端末で、アプリを利用できなくなる。また、(サービス停止から)45日以内にすべての利用者のデータを消去することをユーザーに通知した。
快手科技は2020年5月、アメリカおよびカナダに向けてZynnを投入した。その主な機能は、ユーザーが撮影したショート動画を(タイムラインに)投稿し、友人や家族などにシェアすることだ。それ自体は、快手科技の別の海外向けアプリである「Kwai(クワイ)」や、ライバルの字節跳動科技(バイトダンス)が運営する「TikTok(ティックトック)」など、ほかのショート動画アプリとほとんど変わらない。
しかし(新規投入直後の)Zynnの特徴は、アメリカドルの現金インセンティブの仕組みを実装していたことだった。(おすすめの)動画を視聴したり、友人などを招待してアプリをダウンロードさせると、ユーザーはそれに応じた現金を受け取ることができたのだ。
この現金インセンティブが高額だったことから、Zynnの新規ダウンロード数は急上昇。配信開始から1カ月足らずでアップルの北米向けアプリストアのランキングでトップ3に入り、一時はTikTokに肩を並べた。
「海外戦略に変更なし」と快手は説明
ところが2020年6月10日、現金インセンティブの仕組みに規定違反の疑いがあるとして、グーグルはアンドロイドのアプリストアであるグーグルプレイからZynnを一時削除。その後、アップルもアプリストアでの配信を中止した。
このためZynnは、現金に代わる(規定違反にならない)新たなユーザー・インセンティブの導入を余儀なくされた。だが、配信を再開したZynnにかつての勢いはまったくなかった。調査会社のセンサータワーによれば、北米のアプリストアのダウンロード数ランキングでZynnは300位にも入っていない。
今回のサービス停止に関する財新記者の取材に対し、快手科技は「あくまでZynnという1つのアプリの話であり、わが社の海外市場戦略に変更はない」と説明した。しかし同社は、サービス停止の具体的な理由については明らかにしなかった。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は8月4日
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