「お金が健康を遠ざけていた」という衝撃の事実 スポーツクラブ、サプリ、鍼…でも不調だった私

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その5項目は、わが記憶によれば、確か以下のとおりであった。

①睡眠のための薬を飲んでいない ②目覚まし時計がなくともスッキリ起きられる ③朝食を食べる意欲がある ④朝に排便がある ⑤昼間に居眠りをしないーー

ふむふむ。いゃ~……余裕だ! どれも迷いなくバッチリ「Yes」であった。私はこの5項目を、心に一点の曇りもなく軽々とクリアしたのである。ってことは、私は間違いなく最高の睡眠をとっており、つまりは間違いなく客観的に健康だと言って良いのではないだろうか?

そう私は健康なのだ!

……その事実に、しばしわれながら呆然とする。

なぜって、ずっと私は健康じゃなかったからだ。いや、ずっとずっと健康になりたかった。ゆえに絶えず健康に関心を持ち、すなわち、かの健康をめぐる巨大市場の中にどっぷりと浸かって生きてきた。つまりはかなりのお金を使ってきた。

スポーツクラブに行き、エステに通い、サプリも山ほど買い、漢方医に通い、整体に通い、鍼に通い……雑誌や本やネットや口コミで耳寄り健康情報を絶えず探しまくり、ありとあらゆるところに行った。それに費やした時間とエネルギーはまったくハンパないものがあった。

で、それでも健康は手に入らなかったのだ。いつもなんとなく体調が悪かった。具体的に言えば、手足が冷え、生理痛がひどく、肩と首がバリバリに凝り、胃がムカつき、時に耐え切れないほど内臓のどこかが痛んで夜中に目が覚めた。

となれば、いつだってあらゆる情報をチェックせずにはいられないのも当然である。そしてあらゆる情報に飛びつき、しかし結局はやっぱり体調が悪いままだった。で、それは情報の集め方が足りないからだと思い、無限に熱心にさらなる情報チェックを続け、足を運び……。

まったくわれながらご苦労なことである。

それが、ふと気づけばその、世のほとんどの人が巻き込まれまくっているであろう巨大市場を一人スイっと抜け出して、「だって私、健康なんだもん」と超余裕の構えという、信じられないような状況になっている。

お金を使わない方が圧倒的に健康になれてしまう

いったいいつ、なぜ、こんなことになったのか?

答えはすぐに出た。私が健康になったのは間違いなく、「買わない生活」を始めてからのことだ。

考えてみれば、当たり前といえば当たり前なのだった。暮らしをサイズダウンした揚げ句の単純で質素な暮らしとは、一言で言えば修行僧のごとき暮らしである。グルメもショッピングもナイトライフも便利家電も無縁となれば、早寝早起き、一汁一菜、適度な運動という「ザ・健康的な生活」は、情報など一切集めずとももれなく付いてきたのであった。

で、健康的な生活をすれば健康になれるのである。実に単純明快なことであった。

つづめて言えば、健康を手に入れるテッパンの方法は「質素に生きること」なのだ。

そうなのだ。誰もが健康を手に入れようとしてせっせとお金を使っているけれど、お金を使わない方が圧倒的に簡単に健康になれてしまったという、何か釈然としない話なんである。

ってことはですよ、われらがどうしても健康を手に入れることができない最大の原因は「お金」ということになる。

これは一体どうしたことか。

(次回につづく)

稲垣 えみ子 フリーランサー

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いながき えみこ / Emiko Inagaki

1965年生まれ。一橋大を卒業後、朝日新聞社に入社し、大阪社会部、週刊朝日編集部などを経て論説委員、編集委員をつとめる。東日本大震災を機に始めた超節電生活などを綴ったアフロヘアーの写真入りコラムが注目を集め、「報道ステーション」「情熱大陸」などのテレビ番組に出演するが、2016年に50歳で退社。以後は築50年のワンルームマンションで、夫なし・冷蔵庫なし・定職なしの「楽しく閉じていく人生」を追求中。著書に『魂の退社』『人生はどこでもドア』(以上、東洋経済新報社)「もうレシピ本はいらない」(マガジンハウス)など。

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