空軍パイロット「アフガン超緊迫脱出」の一部始終 「タリバンに見つかったら殺される」変装して実行

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「今、タリバンの戦闘員が、カブール市内の住宅1軒1軒のドアを叩いて周り、身元の確認やどのような仕事に就いているかなど調査しているとの情報が入ってきています。私は間違いなく、タリバン側のブラックリストに入っている人物です。見つかったら必ず危険な目に遭うことがわかっています。タリバンがカブールを制圧してからすぐに、空軍のパイロットであることを証明する資料などはすべて隠しましたし、銃も見えないところに仕舞いました」

事実、空軍を持たないタリバンにとって、最大の敵はアフガニスタン空軍であった。大規模な地上攻撃を行うに当たり空軍の弱体化が狙われ、特にパイロットを狙って暗殺する事例が相次いでおり、今月も同僚のパイロットらが殺害される事件が起きたという。

8月7日には、カブール市内でパイロットの車に取り付けられていた爆弾が爆発してパイロットは死亡、ロイター通信によると死亡したパイロットは1年前に治安上の脅威から家族とともにカブールに移住してきたばかりだったと報じられている。

ここ数カ月で7人のパイロットが基地外で命落とす

タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官はこの攻撃を実行したとの声明を出しており、ここ数カ月の間に少なくとも7人のパイロットが基地外で命を落としているとアフガニスタン当局は明かしているという。タリバンにとって飛行中のパイロットを上空で殺害することは容易ではないため、勤務外のタイミングを狙って自宅などにいるパイロットを標的にする計画が実行されているのだ。

「今はまだカブールを制圧したばかりのタリバン戦闘員らにとって、私がどこの誰であるか、ということまでは把握しておらず、自宅の住所までは判明していないかもしれません。ただ、いずれ彼らは気付き、必ず実行に移すでしょう。その前に国外退避しなければ――」

サイードさんが抱く危機感は、命を奪われる可能性がある深刻なものだ。

次ページタリバンに抵抗せず降伏したアフガン軍への批判と実情
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