中国、チベットに「高速鉄道並み」新線建設の狙い 観光・産業振興のほか中印国境問題も背景に?

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この鉄道に投入された車両、通称「高原復興号」(CR200JS-G)は、電化・非電化にかかわらず走れるバイモード仕様だ。片側の先頭車と2両目がディーゼル機関車、反対側の先頭車1両が電気機関車という珍しい仕様で、これらの間に客車を挟んだ編成となっている。

客車は2等車3両+食堂付き2等車1両+2等車3両+1等車1両+1等・商務車1両(中国の形式体系ではZE―ZE―ZE―ZEC―ZE―ZE―ZE―ZY―ZYS)の9両で、前後の機関車と合わせると12両編成となる。「商務車」は上級仕様で旅客機のビジネスクラスのような座席がしつらえてある。1編成の定員は755人だ。

海抜3000mを超える高地を走るにあたり、旅客の高山病防止対策が充実している。客車内には平地レベルの酸素が常に送られているほか、万一乗客が酸素不足を起こしたときのために、吸入を行えるようバルブが車両内に数カ所設けられている。また、チベット高原では晴天になると強い紫外線を浴びることになるため、窓には紫外線よけのフィルムが入っているのも特徴といえよう。

「信頼性の高い輸送手段」

ラサ―林芝鉄道には、8月中旬時点で毎日3往復が設定されている。うち2往復については、前述の同線用「復興号」編成が投入されているが、残りの1往復は従来型の客車列車が使われている模様だ。

最速の列車はラサ発林芝行きのD8984列車(8時20発・11時54分着)で、所要時間は3時間34分、表定速度(停車時間などを含めた全行程の平均速度)は時速121.8kmに達する。「復興号」を利用した場合の片道運賃は商務車が452元(約7700円)、1等車が206元(約3500円)、2等車が129元(約2200円)となっており、高山地帯を走る全長400km超の路線としては割安といえる。

ラサ―林芝鉄道は最初の1カ月で10万6000人が利用、これを1日あたりに換算すると利用者は平均3500人に達する。定員755人の「高原復興号」が1日2往復、これに客車列車が1往復あるが、推定する乗車率は90%を超えていることになる。曲がりくねった山道を走るバスでの長距離移動と比べると列車のほうが圧倒的に快適だろう。

中国鉄路はラサ―林芝鉄道の開通について、「これまで厳しい地形のためにアクセスが難しかったチベット南東部に、信頼性の高い輸送手段を提供できることとなった」とコメント。同地域の観光振興に貢献するとともに、現地の農家や沿線で展開する企業に対する貨物輸送の改善に寄与すると意義を説明する。

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