リクシル瀬戸欣哉CEOが「創業家と闘った」理由 正しい意思決定ができるプロのインテグリティ

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リクシルの社内でも、役員以外に幹部社員という人たちの15人中、11人が血判状を出して、「瀬戸さんを戻してくれ」と言った。瀬戸さんは自分の利益のために働いているわけではなく、会社を変えて、社会を変えようというインテグリティがあった。そういう真摯さとか、誠実さが信頼されていたということでしょう。

結局、2019年6月の株主総会で瀬戸さんたちの株主提案が会社提案に勝利し、瀬戸さんがCEOに復帰したのですが、この事件は相当大きな反響を呼びました。

新たな目標は「日本の経営者の質を高めること」

日本の株式会社の経営者の選定は、特殊だと言われています。リクシルは、指名委員会等設置会社で指名委員会を設けていたにもかかわらず、また創業家の持つ株は少ししかないのに、創業家であるという影響力だけで会社を私物化してきた。

それを株主総会というオープンなリングで闘って勝った。2019年の日本の資本主義十大イベントの一つに入ると思います。そういう瞬間に関わることができたこと自体が、私としては幸せでした。

そして、瀬戸さんの親友として、この経緯に個人的に関わったことで、日本の大企業において、いかにコーポレートガバナンスが蔑ろにされていたかを知りました。指名委員会を備える委員会設置会社においてであっても、それがまったく形骸化していた事実、「上場しているオーナー企業」など、語義矛盾も甚だしい。

こんなことがまかり通ってよいのかという義憤も、私自身が60歳を前にして、エグゼクティブ・サーチの世界に入った動機の一つです。日本企業の経営者、経営陣、取締役会の質を向上させて日本企業のグローバルにおける競争力を再び取り戻すというのが、私の新たな目標です。

岸田 雅裕 ラッセル・レイノルズ 日本代表

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きしだ まさひろ / Masahiro Kishida

1961年愛媛県松山市生まれ。東京大学経済学部経営学科卒業。ニューヨーク大学スターンスクールMBA。パルコ、ローランド・ベルガー、ブーズ・アレン・ハミルトン、カーニーなどを経て、2021年より現職。2014年カーニー日本代表に就任してからは、企業戦略、事業戦略、リーダーシップ開発、M&A、トランスフォーメーションの支援を多数行った。2021年からは、ラッセル・レイノルズ日本代表として「日本の経営者の質を高める仕事」に取り組んでいる。著書に『マーケティングマインドのみがき方』『コンサルティングの極意――論理や分析を超える「10の力」』(いずれも東洋経済新報社)などがある。

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