リクシル瀬戸欣哉CEOが「創業家と闘った」理由 正しい意思決定ができるプロのインテグリティ
意思決定と言えば思い出すのが、2011年の東日本大震災のときのことです。私自身はこのときの経験によって、強烈に変わったと思っています。
私は当時ブーズの日本の責任者を、もう1人のベルギー人と共同で務めていました。ブーズのグローバル・マネジメントの動きは非常にスピーディーで、地震の起きた日の夕方にはブーズのグローバルのトップを議長とするリスクマネジメント委員会が立ち上がり、電話会議が開かれたのです。世界に散らばるリスクマネジメント委員会のメンバーは、日本で起きていることを正確に把握していました。
「専門家を交えて検討した結果、原発は早晩メルトダウンに陥るであろうという見通しになった。そうなったら東京はパニックになり、従業員とその家族の安全を保証しがたい局面も予想される。明日にでも交通手段を確保して(たとえばバスをチャーターして)、全従業員とその家族を東京から脱出させろ」
私はこれを聞いて、性急すぎるのではないかと驚き、こう答えました。
「そうなるかもしれないが、まだ詳しいことがわからない。もう少し情報が出揃うのを待ってほしい」
「君にはリスクマネジメントというものがわかっていない。今、動けば、従業員とその家族の安全は相当に高まる。しかし動くのが遅れたら、大変な混乱に巻き込まれる可能性がある。幸いメルトダウンに陥らなければ、戻ればよいだけだ」
今この場で結論を確定することが重要なのだという言葉には、説得力がありました。
厳しい判断を先送りにしがちな日本人
翌日以降、東京のパートナーたちと激論です。
「家族の中には、そんなに簡単に動けない人もいる」
「自分たちだけ東京を脱出するなんて、日本人として恥ずかしくないか」
結局、従業員とその家族のうち、希望者は会社の費用で東京より西に避難するという結論になりました。
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