音が独特?白い都営浅草線「5300形」が遺した功績 VVVFインバータ制御による省エネ化が持ち味

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今でこそ、地下鉄に冷房があるのは当たり前になったが、地上を走っている鉄道に比べると、冷房化への取り組みは15年程度遅い。冷房化が遅れた理由には、排熱の問題とオイルショックが絡んでいる。

地下鉄の冷房化は1970年代に検討が行われ、地下鉄のトンネル自体を冷やしたり、駅を冷房化したり、といった取り組みが行われた。これには膨大な費用とエネルギーを要するが、ようやく着手に至ったところ、オイルショックで経済が減退し、エネルギーの浪費にも関心が向くようになると、先送り・頓挫を強いられることになる。

冷房の排熱について考えると、例えば家庭などで冷房を使用した場合、部屋は涼しくなるものの、家の外に置かれた室外機から熱風を捨てることになる。電車も似たような構造で、電車で冷房を使用すると中は涼しくなるが、電車から捨てられた熱で周りは熱くなってしまう。特に地下鉄の場合はトンネルの中を走るだけに、熱が捨てきれない。

ということで、せっかく冷房付の車両を作っても、地下鉄の中では冷房を止めざるをえないという時期もあった。このほか、冷房の搭載準備を行った車両も作られたが、地下鉄線向けではなく、乗り入れ先などの地上区間で冷房を使用するという考え方だった。

この問題に解決の糸口が見いだせたのは「省エネルギー化」で、5300形ではVVVFインバータ制御としたことで排熱の量が減り、地下鉄線内で冷房を使っても問題がないとされた。もっとも、都営浅草線では省エネルギーでない車両でも冷房を使っていたが、なんとかなってしまったとも言えよう。

5300形は都営浅草線の冷房化推進に貢献した車両だが、ちょうど5300形が登場した1991年には京成線を経由して北総線との相互直通運転も始まった。乗り入れの都合で都営浅草線の車両も北総線に乗り入れたが、北総線への乗り入れ開始当初は5300形の数が少なく、都営地下鉄の車両は冷房のない車両ばかりだった。

北総線は建設費用の回収が必要で、高額な運賃を設定せざるをえない状況が続いている。だが、運賃が高額にもかかわらず、1990年代前半には冷房のない車両が都営浅草線からやってくるという状況で、気の毒な話だった。都営浅草線から冷房のない車両が引退したのは、1995年のことだ。

VVVFインバータ制御の強み

都営浅草線では、京成線や京急線と相互直通運転を行っている。

都営浅草線開業60周年を記念したヘッドマークを掲出して走る5300形(筆者撮影)

地下鉄では隣駅までの距離が短く、急カーブや急勾配が多く、加速重視の車両が求められる。一方、京成線や京急線では特急や急行といった優等列車が設定され、停車駅の間隔が長く、高速で走行できる車両が求められる。

車両としてはまったく矛盾した要素で、地下鉄を走る車両では、モーターを付けた車両を増やすことで、矛盾した要素に対処している。だが、5300形をはじめとしたVVVFインバータ制御の車両では、モーターを付けた電動車の数を大幅に増やすことを行っていない。5300形では8両編成中の4両にモーターが付いていて、JR線や大手私鉄の路線で一般的な割合と言って良い。

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