音が独特?白い都営浅草線「5300形」が遺した功績 VVVFインバータ制御による省エネ化が持ち味

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VVVFインバータ制御では、交流のモーターが使用されているが、従来の直流のモーターよりも高い回転数で動かすことができる。また、VVVFインバータ制御によって従来よりも滑らかな加速ができるようになり、高い加速性能も維持できる。

この結果、加速性能を良好に保ちつつ、高速性能も満足させるような矛盾した要素にも十分対処できるようになっている。

京急線では1995年から最高速度を向上させ、品川―横浜間で時速120km運転が始まった。これに合わせる形で、5300形でも時速120km運転に対応した5327編成が1998年に登場し、京急線での時速120km運転を目論んでいた。

後継車両の5500形。この車両が出そろうと、5300形が完全に引退する見込み(筆者撮影)

5327編成は、他の5300形と見た目の大差はないが、モーターのパワーアップなどが行われていた。他の5300形も時速120km運転対応に改造する計画もあったが、立ち消えとなっている。

ちなみに、新形の5500形では時速120km運転に対応している。京急線に加え、京成線側でも成田スカイアクセス線で時速120km運転が行われるようになり、5500形も成田スカイアクセス線で試運転が行われている。将来は、京急線や成田スカイアクセス線で都営浅草線の車両を用いた時速120km運転が実現するのかもしれない。

路線図が光る

5300形の車内では、窓を背にしたロングシートを備え、ごく普通の通勤電車に見られるスタイルとなっている。

5300形の車内。登場から20年を経て、各所に手が加えられている(筆者撮影)

5300形では座席にバケットシートを採用したが、この座席は1人分が区分され、座面や背もたれに凹みを持たせたものだ。後の改修により、座席の中央部に手すりが付いたほか、床材を交換したので色合いが変わっている。

また、扉の上には車内表示器があり、当初はLED式による電光表示に加え、都営浅草線内の停車駅が電光表示される路線図式が交互に配置されていた。路線図式は見やすさが抜群に良いのだが、路線図に変更を加える作業が大変だ。都営浅草線では1998年から特急運転を開始して通過駅が設定されたのをはじめ、都営大江戸線が開業して都営浅草線と接続するといったように、周辺の路線も変遷が著しく、路線図式の使用をやめて現在では通常の路線図が掲出されている。

新形車両の5500形は順調に増備が進み、2021年度中には予定数の27編成の投入が完了する。2021年7月現在では、26編成分が投入され、残り1本という段階となった。一方で、5300系も2018年から廃車が進み、2021年7月現在では5319編成と5320編成の2本が残っているにすぎない。

昨今の事情により、「さよなら運転」などのイベントは行われない見込みで、5500形の投入が完了すると5300形が静かに引退することになるのかもしれない。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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