李登輝・元台湾総統--ECFAは香港・マカオ化の一歩、国民投票で阻止し、FTA締結を
台湾が中国との関係で、「実利か、アイデンティティか」で揺れている。
馬英九総統が自ら打ち出した中国との実質的な自由貿易協定(FTA)となる「両岸経済協力枠組み協定(ECFA)」を、6月中の合意を目指して推進中だ。これに対し、民主進歩党(民進党)をはじめ野党側は「中国に経済、政治的にのみ込まれてしまう」と危機感をあらわにし、反対運動を繰り広げている。
そのようななか、台湾の民主化を成し遂げ、中国とは一線を画し、「台湾は台湾」と主張して続けてきた李登輝・元総統も、「ECFA」に反対の意志を示した。
アジア最高の哲人政治家とされ、「台湾アイデンティティ」を打ち出してきた李元総統は、現政権のような中国との政治・経済関係を構築することに、どのような考えを持っているのか。「東洋経済オンライン」との単独インタビューでは、「ECFAは問題がたくさんある」と指摘、その有効性に疑問を呈した。(インタビューは5月5日に実施)
--現在の馬英九政権はECFA(両岸経済協力枠組み協定)を中心に、中国との経済的関係を強化しています。この動きをどう見ていますか。
今、馬英九政権は大きな2つの問題にぶつかっている。1つは、リーマンショックから生まれた世界同時不況による需要の大幅な減退をはじめ、不景気の状態にある台湾をどうすべきか。もう1つは、台湾経済の情勢と機会という問題だが、民進党政権時代から今の馬英九政権に至るまで、これらをまったくやっていない。そんな状態で、台湾経済はどのような機会=チャンスを持つべきかということが重要だ。
馬英九総統は、台湾の問題をもっぱら大陸に依存するやり方でやっている。私が総統だった時には、台湾経済の自主性、そして台湾の自主性を持ちつつも、台湾なりにやっていこうと努力してきた。その中でも台湾が今まで農業や中小企業に至るまで革新=イノベーションをやってきた経験がある。しかし今は、エネルギー問題がまったくなされていない。これが未解決の最大の問題だ。
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