国家プロジェクトは500億円を境に国際化

ビッグサイエンスの成長戦略とは?

宇宙分野は大富豪からの寄付のみならず、小規模寄付を集めるにも熱心です。ある天文学者がハワイに設置するTMT望遠鏡の寄付を紹介する場に居合わせました。聴取の多くは年配者。そこで「将来お孫さんがハワイにいくきっかけに、お孫さんの名前をプレートに入れる小規模寄付に参加しませんか」と声をかけていたのは印象的でした。

大型化する科学は、レベル1=国家プロジェクト、レベル2=国際プロジェクト、レベル3=国際プロジェクト+寄付といった資金獲得で動いています。

論文執筆者はABC順

研究の成果は、多くの場合、論文で発表されます。特に誰が貢献した研究なのかが一目でわかるように、医学・生物系をはじめとする多くの分野で、寄与順に著者名を並べ最後に代表者を入れる「ファーストオーサー制」がとられています。

ビッグサイエンスの成果は、以下の2つのタイプに分けることができます。ひとつは、天文学のように装置は大型であっても装置を利用するグループは少人数で成果を挙げるタイプです。論文の著者並び順は、最初の数名は寄与順に、その後ろにデータ取得などに貢献したそのほかの人はABC順に並べます(分野によってはこうした協力者を謝辞に入れる分野もあります)。

もうひとつのタイプは、巨大装置を用いて、グループでひとつの成果を目指す分野です。著者数は数百人から数千人と膨大で、寄与順を示すことは不可能なので、すべての名前がABC順で記載されます。ヒッグス粒子を発見したアトラス実験グループの著者数は3000人を超え、冒頭にはグループ名のみを記載、論文の最後に12ページにわたって著者名が書かれました。

また、この分野は国際会議での発表がメインであり、論文は数か月後に追って出版されるのも特徴的です。論文は全員が一緒に書くことは不可能なので、執筆委員会が立ち上がり、全員の協力を得ながら一本の論文にまとめられます。

大人数が関わることから情報管理が難しく、最新の結果が多くの人の前に明らかになる国際会議が研究者のみならず社会への情報発信のタイミングになっています。

実は大型実験以外にもABC順をとる分野があります。それが数学分野です。著者数が2人、3人など小規模であるのになぜでしょうか。数学の研究者に聞くと、文章の中ではたった5行にしかならないアイデアであっても、それがなければ決して解けない問題があり、寄与順に並べるのは無理があるとのことでした。また天文学や物理の多くの分野で、最初は寄与順に名前を書き、データ取得を中心に参加した研究者や学生をABC順に並べると聞いています。

成果は誰のもの?

ファーストオーサー制の論文では、研究成果が誰のものかはすぐにわかります。では大型実験の成果は誰のものと評価されるのでしょうか。

ある生物の研究者と話していた際に、競争相手は世界中に5つほどあると聞いたのが印象的でした。ビッグサイエンスでは、競争相手は巨大化したグループの中にいます。特に最終的な結果をだす解析においては、10も20もグループが立ち上がり、それぞれに熾烈な競争がされるようです。

著者に入るということは著者の寄与があるということなので、グループ全体の成果であると参加者たちは自らを誇っていると思います。同時に、グループの代表(場合によっては2人や3人いることもあります)を科学面でも運営面でも強く尊敬する、代表が評価されることをメンバーとして誇らしく思う雰囲気があります。決して、代表のために働いている、歯車のひとつに過ぎない、という感覚はないことは不思議にも感じますが、これも内部での競争が激しく、勝ち残る人への強い尊敬が醸成されているからかもしれません。

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