「大坂なおみ批判」噴出で見えた日本の多様化の嘘 開会式で見せようとした理想とはほど遠い状況

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八村塁もまた標的になってきた。実際、塁と阿蓮の八村きょうだいの今年5月の一連のツイッター投稿によれば、2人とも差別的なコメントを投げかけられている。阿蓮によると、彼のインスタグラムに当てられたメッセージには、彼と兄は「間違って生まれた」のだから「死ぬべきだ」と書かれていた。これに対して、塁は「そんなメッセージは毎日のように届くよ」と返している。

攻撃の対象になりやすいグループに属している

それでも、大坂がなぜこんなにもそのような罵りの標的にされるのかは、答えるのに複雑な問題だ。その理由はおそらく、彼女が、しばしば恐怖や憎しみ、そして無知を基盤にする集団の攻撃対象になるいくつかのグループに属する注目の人物だということだろう。

1. 彼女は女性で、アメリカや日本では、女性嫌悪(ミソジニー)が依然として残っている。
 2. 彼女はアジア人で、#StopAsianHateに同調するアジア系に対する人種差別撤廃の運動に対する関心は高まっているが、この問題を緩和するにはほど遠い状況だ。
 3. 彼女は異人種の両親を持っており、ということは、彼女は無知、差別、自覚なき差別、そして阻害化の標的になりやすい。
 4. 彼女は精神疾患、つまりうつ症状を患っている。したがって、彼女は精神疾患にかんする無知や誤解、こうした病気を患う人への差別的な視線に耐えなければならない。

一方で、SNS上には大坂に対するねぎらいやサポートの声もかなり多く、否定的なコメントの数は比較的少ないように思われる。

そんなに勝ちっ放しってありえないですよ。負けるときだってあってあたり前にです。だからこそ強くなれるんでしょう。良く参加してくださった。頑張ってくれてありがとうございます。ゆっくり休んで、次に備えて下さい。

大坂は9月の全米オープンに出場する見通しであり、早めにオリンピックを離脱したことは残念ではあるが、全米オープンでのタイトル防衛に向けた肉体的、そして何より精神的な準備の時間をより多く取れることになる。

私はこれからも彼女を応援するし、少なくない日本人がそうするはずだ。こうしたことに積み重ねが、日本が開会式で見せようとした多様化につながっていくことを願っている。

バイエ・マクニール 作家

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Baye McNeil

ブルックリン出身の作家・コラムニスト・講演者。2004年に来日し、「The Japan Times」 などで執筆しながら、異文化の交差点で生きる経験や、人種・アイデンティティ・多様性について鋭い視点で発信している。代表作 『Hi! My Name is Loco and I am a Racist』 に続き、最新作『Words by Baye, Art by Miki』 では、日本人の妻と築いた人生をユーモアと洞察に満ちた筆致で綴る。日本社会の枠にとらわれない視点が話題を呼び、講演やワークショップも多数開催。ジャズ、映画、ラーメンをこよなく愛する。

ウェブサイト:Baye McNeil/life in Japan

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