マイホーム購入で「FIRE達成」は遠ざかるのか 「引退後の家賃」を試算したことがありますか?

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公的年金水準は「家賃手当」を含んで設定されていません。賃貸生活者のために家賃手当は上乗せされません。おおむね年金収入と日常生活費は等しくなっています。これはつまり、引退後には原則として持ち家を所有していることを国は想定しているということです(そのために、住宅ローン減税などを政策で実施、住宅取得を促しているともいえます)。

生涯を賃貸で過ごしたいと考える人は、「老後に2000万円」問題とは別に「老後の生涯家賃相当分」を確保してリタイアする必要があります。

「引退後の家賃」を試算すると?

仮に引退後は月6万円のシンプルな部屋に暮らすとしても、100歳人生を見込めば65歳から35年分、なんと2520万円も必要になります。「老後に2000万円」の予算は倍増します。月12万円の部屋ならその倍ですから5000万円でも足りなくなります。FIREの前提が大きく変わってくるわけです。

これにFIRE期間分の家賃も必要です。40歳リタイアで25年分を確保するなら月6万円の部屋でさえ1800万円です。

さらに指摘を加えると、数十年分の家賃をあらかじめ確保するというのは、さらに難しいところがあります。家賃が改定されて増額する可能性、更新料や家賃保証料等の発生、建て替えなど大家さんの都合による退去リスクなどを考えると実際にはもっと上乗せしておく必要があります。

現役時代は賃貸派でもいいのですが、ことFIRE後、そして老後については死ぬまで居座れる「終の住処」は必要だと考えられるのです。

また、住宅ローン設定者に税制優遇が与えられるのも無視できません。住宅ローン減税はiDeCoと並んで会社員が得られる数少ない税制メリット(所得控除)です。

FIRE達成後は所得がなくなり資産の収益や取り崩しで暮らすことを考えると、所得税・住民税の課税額がそもそも減少し、税軽減メリットを最大限享受できなくなります。そのため、FIRE達成までに家を購入し住宅ローン減税を活用するような視点も必要になってくるのです。

実際問題、FIREに成功した人を見る限り、自宅を確保していることが多いように思います。ついつい「億り人になるプロセス」のほうに注目が集まり、運用テクニックばかりを参考にしたくなるわけですが、むしろ注目すべきは、住宅購入などの「運用以外」の資産形成の部分です。

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