2つ目の理由は、渋谷のオフィス不足だ。渋谷は「ビットバレー」と呼ばれ、IT企業の聖地でもある。渋谷にオフィスを構えると、採れる人材も変わることから、オフィス需要は根強くあり、稼働率も高く、オフィス賃料も丸の内に準ずるほど高い。しかし、大規模ビルが極端に少なかった。
このため、メガベンチャーはビルを分散し、階数が分かれたところに入居していた。ワンフロアの面積が広い方が仕事の生産性を上げやすいので、賃料単価は高くなるものだが、そもそもそんなビルが少なかった。賃料の支払い能力が高いIT企業が多いだけに既存の建物を建て替えて、オフィス床面積を増やしたかったのだ。
「都心の大地主」の夢が再開発
オフィスの床面積はその2/3が都心5区(千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)に集中しているが、その大地主は以下の様にほぼ決まっている。丸の内を中心とする千代田区は三菱地所、日本橋を中心とする中央区は三井不動産、六本木を中心とする港区は森ビル、そして渋谷区は東急だ。
残る新宿区はオーナーが分散し、建て替えをせず、耐震補強をする方向で進んでいるので、今後も駅前では大きな開発は進みそうにない。それだけ、再開発には多大な調整の労力が必要なので、強い意志を持ったリーダーが必要なのだ。その強い意志は大地主の夢の様なものでもある。
その夢を端的に表すのは、ビルの高さだ。現在、日本で最も高いビルは大阪のあべのハルカスで300mになる。これを次に抜くのが、六本木1丁目と神谷町駅の間に建つことが決まっている。この2つの駅を地下道でつなぎ、その地下道で日本一高いビルにも行くことができる。
事業者は港区の大地主・森ビルで、六本木ヒルズをつくったデベロッパーだ。建設中のこのビルは325.19mとなり、近隣の東京タワー(333m)と背を並べることになる。2023年開業で、その際は六本木ヒルズの様にニュースや情報番組で取り上げられるだろう。森ビルの商標登録状況から「虎ノ門麻布台ヒルズ(略称:虎麻ヒルズ)」になると言われている。
なお、2027年には三菱地所が東京駅日本橋口前で開発を進めている「トーチタワー」(390m)が竣工を予定しており、虎麻ヒルズを抜く見込みだ。
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