貧しい生活が続くと、周囲の人々の生活状況に敏感になる。雅美さんは「貧しい人のなかにも格差がある。真面目に生きている人ほど損をしちゃう社会です」と憤る。派遣の同僚のシングルマザーたちが、自分よりはるかにいい生活をしているようだ。
「10万円の給付金と、子どもへの給付金で東京に旅行に行ったとか。もうひとりの子は夫婦で生活するより、離婚したほうがお金がもらえるから偽装離婚とか。えー、それ違うと思いながら聞いています。私はずっと真面目に働いて、主人が亡くなって、結局なにも残らないどころか、出ていくばかり。消費者金融の借金は、一生かかっても返せないかもしれません。だから、そういう話を聞くと、文句を言いたくなります。あまりにも違いすぎる」
情報強者は救済され、情報弱者は苦しみ続ける
日本の社会保障制度、借金救済制度は申請主義なので、制度を知って自分から申し出ないと受けることができない。情報強者は救済され、情報弱者は苦しみ続けるという性格がある。雅美さんは後者だった。
「もう、だいぶ前に自分の人生は諦めているけど、老後は海のそばに行って、静かに死にたいってひそかな希望はある。ひとりで行くのは淋しいので、一緒にいってくれる人がいればすごくいいかな。でも、満足に食べることもできない生活なので、出会いはないと思う。すべて諦めると、また死にたいと思うかもしれないから、それは怖いです」
2019年民間給与実態統計調査によると、正規と非正規、男性と女性の賃金差が明確にでている。女性の非正規労働者の平均賃金は152万円であり、男性の正規労働者561万円の3.7倍もの差がでている。
生活が苦しい雅美さんは収入を上げ、支出を下げて実質賃金を上昇させる必要がある。中年女性にまともな賃金が用意されてないとすると、肉体を酷使するダブルワーク、トリプルワークに突入するのは時間の問題だ。そうする前にまず早い段階で債務を整理し、家賃の安い部屋に引っ越すべきだったか。最後にそれを伝えてオンラインを切った。
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