「死ぬまで低賃金」を嘆く56歳元専業主婦の貧困 美容師の仕事は時給1000円にしかならなかった

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「賃金は昇給してやっと時給1050円です。でも家賃が7万円かかるので、ギリギリ生きている感じです。いま以上の節約は、もう食べないとか、着るものを買わないとか。それくらいしかないです。田舎なので野菜はもらえる。夫が亡くなってからは冷凍してもらった野菜だけ食べるとか、そうやってなんとか生きています」

同じ年齢だった夫は2019年末に亡くなった。持病を患っていて突然歩けなくなり、救急車で運ばれたその2日後に息をひきとった。そして、亡くなってから雅美さん名義の夫がした借金が発覚し、いまその借金を返済している。40代、50代の女性の求人は賃金の安い非正規職しかない。フルで働いても、食べて着て眠る普通の生活ができない。雅美さんは食費節約のためにもらった野菜ばかり食べていた。雅美さんは話ながら泣きだしてしまった。

「夫が亡くなってからしばらくは、もうしんどい、自分の人生はもういいやって思ってました。ずっと苦しいことしかないし、ずっと貧しいし、将来はたぶんもっと貧しくなる。だったら、死にたいなって。しんどいのは主人を失ってひとりになったこともあるけど、50代女の賃金は安くて、どれだけ働いても普通の生活ができないことです」

朝から晩まで働いたけど、なにも残らなかった

キレイに整頓された家賃7万円の部屋のリビングで、自分にスマホをむけている。家賃は高いと思ったが、その意見を伝えるのは後にする。涙は、まだとまらない。

「絶望というのでしょうか、もう死んだほうがマシって。娘がいなかったら本当に死んでいたと思います。主人とは借金返済の目途がたったら2人で、海の近くに住んでゆっくりしようって話していました。でも、主人は逝ってしまった。だから、もういいかなって」

頻繁に連絡をとっているひとり娘は現在32歳、数年前に関東に嫁いだ。ずっと落ち込んでいる母親を心配した娘が電話をかけてくるという。

「いままで生きてきた人生を振り返ったとき、借金、借金、借金。真面目に朝から晩まで働いて、それで最終的にはなにも残らなかった。娘だけ。私はこれからも、どんどん年齢は重なって、たぶん死ぬまで低賃金で収入は上がらない、貯金もない、不安しかないです」

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