UAEがサウジアラビアに「反旗」で広がる不協和音 サウジの盟友離反が原油市場の攪乱要因に
日本総合研究所の松田健太郎・副主任研究員は「(3月のOPECプラスの閣僚級会合で)国内の原油需要への対応を理由にロシアやカザフスタンの増産が認められたこともあり、UAEは自国の増産が認められるべきだとかたくなな姿勢を見せた」と解説する。
また、ある業界関係者は「UAEは『脱炭素社会』の到来を見据えて、自国の天然資源を早く現金化したいのだろう」と読む。
脱炭素化の動きが急加速し、世界の原油需要は長期的には減少するとみられている。国際エネルギー機関は5月、2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)達成に向けたロードマップを策定。50年の原油需要は今よりも約7割減少し、日量2400万バレルにまで落ち込むとの試算を示した。
UAEはOPEC脱退の可能性も
日増しに強まる脱炭素の流れはUAEの国家戦略にも影を落とす。UAEは近年、設備投資を進めて原油生産能力を増強してきた。脱炭素化によって自国資源が割安になる前に収益化し、その利益をもって非石油産業への投資を増やして、経済構造を変革したいというのがUAEのもくろみだ。
UAEが今回、いわば盟友であるサウジとの仲たがいもいとわなかったのは、それだけ原油の価値が持つ期間が短いとみて、経済構造変革への焦りがあったことの裏返しといえるだろう。
さらに、UAEの強硬姿勢は今後の中東情勢にも影響を及ぼしかねない。前出の業界関係者によると、UAEは自らの主張を通すために「OPEC脱退をちらつかせる可能性もある」という。
サウジは2021年2月、海外企業に対して、2024年までにサウジ国内に中東地域本社を置かなければ、政府の調達先から外すと発表した。多数の海外企業が拠点を置くのはUAEのドバイで、サウジからUAEにけんかを売った格好になる。
これまで中東の大国イランに対し、サウジとUAEが一致して抑える構図だった。しかし、UAEの反旗はこの構図が変化しつつあることを示している。
対イランで結束してきた両国の関係が悪化する一方、6月に行われたイランの大統領選挙では反米保守派のエブラヒム・ライシ師が当選した。イランの外交政策は強硬姿勢が強まる可能性が懸念されている。
こうした中でUAEの反旗が持つ意味合いは大きく、中東のパワーバランスを大幅に変える可能性も秘めている。地政学リスクが高まれば、原油価格は一層不安定さを増すことになりそうだ。
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