高額でも「ゴツいSUV」が急に売れ始めた2つの理由 ラングラーやランクルが大人気となった背景
それでも外観は悪路向けSUVに通じる野性的な雰囲気で、4WDグレードを充実させ、コーナリング性能を高める「ダイナミックトルクベクタリングAWD」という新しい4WDシステムも用意した。
そのため、FFベースでありながら、SUVの原点回帰に沿って堅調に売れている。基本的な動力性能や居住性はハリアーとほぼ同じだが、コンセプトとデザインを変えて巧みにターゲットをわけているのだ。
シティ派、ラフロード派、本格派
メーカーがSUVを扱うメリットは、この多様性にある。同じエンジンやプラットフォームを使いながら、性格の異なる複数のSUVを用意して幅広い志向のユーザーを取り込み、販売台数を伸ばすのだ。
トヨタは、このSUVの特徴を上手に活用している。トヨタは一部のOEM車を除くと軽自動車を販売しないから、小型/普通車を充実させねばならない。そこで人気のSUVを豊富にそろえた。その内容は以下の通りだ。
上記のシティ派とラフロード派は、両方ともFFベースだが、性格は異なる。Lサイズの場合、ハリアーは販売の中心となるシティ派で、RAV4は基本部分を共通化しながら、原点回帰も視野に入れた野性的なラフロード派だ。Lサイズには、さらに別枠でFRベースの本格オフロード派であるランドクルーザープラドもある。
コンパクトサイズではシティ派がヤリスクロス、ラフロード派は「ライズ」だ。ライズはFFベースだが、外観はRAV4のように野性味を感じさせるもの。
2021年上半期の登録台数は、ヤリスクロスが5万5160台(1カ月平均9193台、ヤリスとGRヤリスを除く)、ライズは4万7965台(1カ月平均7994台)であった。ヤリスクロスとライズには、異なる性格を与えることで、重複するボディサイズと価格を持ちながら共存している。
これから登場すると目される「カローラクロス」も、「C-HR」とプラットフォームなどを共通化しながら作りわけられる1台だ。
C-HRは5ドアクーペ風のボディを備えたシティ派で、スタイリッシュだが後席と荷室は狭く、後方視界も悪い。開発者によると、トヨタの視界基準ギリギリだという。その点でカローラクロスはラフロード派に含まれ、外観は本格派SUVの印象だ。後席と荷室にも余裕があって視界はいい。
シティ派とラフロード派の作りわけは、海外メーカーも積極的に行っている。アウディ「Q3」は、実用的な標準ボディと、天井を低く抑えてリアゲートを寝かせた「スポーツバック」を用意した。メルセデス・ベンツ「GLC」や「GLE」にも、車内の広い標準ボディとクーペがある。
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