高額でも「ゴツいSUV」が急に売れ始めた2つの理由 ラングラーやランクルが大人気となった背景

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「一番の特徴は、お客様の平均年齢が39歳と若いこと。ジープのお客様は、全般的に若く40代が多いが、ラングラーは年齢がさらに下がる」

ラングラーの価格は518万~638万円であるから、購買層の平均年齢が39歳なら際立って若い。いわゆる“クルマ離れ”が進む以前、若い人たちはこぞって高価格のスポーツカーを購入したが、同様のことが今は悪路向けSUVのラングラーで生じているのだ。

人気の理由をジープの販売店に尋ねると、異なる視点の意見も聞かれた。

ジープは統一された新しい意匠のディーラーを続々とオープンさせている(写真:FCAジャパン)

「ラングラーが若いお客様を中心に購入されている背景には、資産価値を高く保てるメリットもある。ラングラーは購入から数年を経たときの売却額(リセールバリュー)が高く、新車を買って初回車検を受けるまでの3年間にわたり使っても、新車価格の約70%で売却できる。残価設定ローンの利用も多く、月々の返済額を抑えられる。高齢のお客様は、現金で購入して長く使うが、若いお客様は短期で乗り替える。そのために高値で売却できるラングラーを選ぶ。高価格車でも、実質的な出費を抑えられるからだ」

セールスマンの指摘通り、ジープブランドの新車販売台数が増えたのは最近のことだ。2021年上半期には、7372台のジープが登録され、その内の3749台はラングラーだった。しかし、約10年前(東日本大震災が発生する前の2010年上半期)は、ジープブランド全体でも登録台数は901台にすぎなかった。

つまりジープブランドは、過去10年ほどの間で販売台数を8倍に増やし、特に伸び率の大きな車種がラングラーで、ブランド人気を高める原動力になっている、ということだ。

コンパクトで300万円台からと価格な手頃な「レネゲード」もジープに人気を後押しする(写真:FCAジャパン)

高いリセールバリューを支える中古車人気

しかし、ラングラーの販売台数が急増したのはここ数年のことだから、中古車として流通する台数は少ない。その一方で、新車価格が500万円を超える高額車だから、安価な中古車を狙うユーザーも多く、需要が流通台数を上まわり、中古車価格を高騰させている。これが、高いリセールバリューの理由である。

一般的に3年後の売却額は、新車価格の42~50%だ。先のセールスマンが述べたラングラーの70%という数字は異例に高く、資産価値の保全効果は大きい。

注意したいのは、話に挙がっていた残価設定ローンの残価が、日本車と違って保証型ではないことだ。今のところその心配は少ないが、支払い精算時に市場での相場が下がっていれば、たとえ走行距離が延びていなくても精算金額を請求される可能性がある。

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