「夢を持とう」は子どもへの呪いの言葉でしかない 必要なのは、本人の価値観を知ることだ
子どもに合ったワクワクを見せていますか?ビリギャルのさやかちゃんに慶應をすすめたのも、「慶應合格」がさやかちゃんに合ったワクワクだったからでした。
僕がいる塾に来たさやかちゃんは当時偏差値30の学年ビリ。金髪で服装も派手なギャルでした。そのさやかちゃんに「志望校どうする?」と聞いたら「大学の名前とかよく知らないしわかんない」。「東大って知ってる?」と聞くと、さすがに知っていました。でも「分厚いメガネかけて、シャツもインしちゃっててダサイ男しかいないからイヤだ」って言うのですね。100%偏見ですけど。でも、この答えで僕はさやかちゃんの価値観をうかがい知ることができました。
「じゃあ、慶應はどう? 慶應ボーイって聞いたことない?」と聞くと「聞いたことあるある! イケメンでしょ? 櫻井翔くんでしょ?」
さやかちゃんの目に少し輝きが見えました。
「慶應目指す?」
「でも、すごい頭いいところでしょ。さやか超バカだよ。みんな絶対無理だって言うよ。慶應目指すなんて言ったらバカにされるに決まってる」
「じゃあさ、そんな君が慶應に受かったら、超ウケない?」
「超ウケる!」
さやかちゃんは笑い出しました。それで慶應を目指すことに決めたのです。
ここでのポイントは、「今の偏差値から考えてここが狙いどころ」という合理的な理由や、「就職に有利だから」とか「名門大学だから」といった大人の考えがちな理由ですすめたわけではないというところです。金髪ギャルのさやかちゃんは、キラキラした人たちが周りにいて、その中心にいる自分にテンションが上がるのではないかと思って伝えたのです。
プラチナカードで子どもの価値観を知る
僕は塾ではじめて会う子どもたちによく「プラチナカード」というのを書いてもらいます。今、神様が目の前に現れて、キラキラ輝くカードをくれたとします。そこに書いたことはなんでも叶います。君はなんて書く?というものです。
「東大に合格」「ハーバード大に合格」「お金持ちになりたい」「海賊王になる!」「お母さんに家を買ってあげたい」「アラブの石油王と結婚」……。
こんなふうに、なんでもいいから書いてもらいます。すると、その子が大事にしている価値観が見えてきます。
「東大に合格」「ハーバード大に合格」と「海賊王になる!」は実は共通していて、競争に勝って一番になることを重視していると考えられます。
「アラブの石油王と結婚」も、本当に中東系の顔が好きで結婚したいと言っているわけではないでしょう。「お金持ちになりたい」と同じで、安定していることが大事だという価値観なのです。
「お母さんに家を買ってあげたい」という子は、お世話になった人に恩返しをしたいという浪花節的な価値観を持っています。
その子に「こういうことをしたい」「これが好き」というものを聞いて、その本質的な部分を見据えて「じゃあ、こうなったら最高だよね」と最上級バージョンを提示できたら、子どもの目はイヤでも輝きます。
それをせずに「将来なりたいものないの?」と聞くのは意味がありません。というより、逆効果。「自分はやりたいことがないんだな」「夢を持てない人間なんだな」と思わせてしまうだけです。
なりたい職業を聞く前に、好きなことや大切にしている価値観を聞いてみてください。そのうえで、決して押しつけることなく、「こんな職業があるよ」「こんなのもいいんじゃない?」と教えてあげましょう。
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