「夢を持とう」は子どもへの呪いの言葉でしかない 必要なのは、本人の価値観を知ることだ
子どもはどんな職業があるのかを知らないし、名前は知っていても仕事の内容をよく知りません。わからないことを聞かれて「どうして夢がないの? あなたの人生なんだからちゃんと考えて」なんて言われてしまうのです。
子どもから見ても、「なんでそうなるの?」と言いたくなるところかもしれません。
出会う大人が親・先生・先輩・店長では職業は選べない
子どもに将来のことを考えてもらいたければ、やみくもに「将来何になりたいの?」と聞くのではなく、その子の性格や価値観などと照らし合わせて考えながら、「こういうことをするのが面白いんじゃない? ワクワクするんじゃない?」と提示することが大事です。
「なりたい職業ランキング」は日本FP協会や第一生命、ベネッセなどが毎年調査をして発表しています。ランキング上位に挙がるのはだいたい同じで、スポーツ選手、保育士、学校の先生、お医者さん、警察官、パティシエ、研究者、ゲームクリエイターといった職業名が並びます(2020年はリモートワークの影響もあってか会社員もランク入りしました)。高校生になると「公務員」や「事務員」などが登場するものの、たいして変わらない印象。要するに、自分にとって身近な職業を答えているのです。
ある進路指導の専門家が、「子どもが大人になるまでに出会う大人は、親、先生、先輩、店長の4種類だ」と話されていました。確かにそうなのです。小さい頃に身近な大人は親と先生で、部活に入れば先輩、アルバイトをはじめたりすれば店長と出会いますが、それだけ。そうすると、「親みたいになりたい」「先生みたいになりたい」「先輩みたいになりたい」「店長みたいになりたい」と思うしかないですよね。
またこの方は、親が子どもに「こうなってほしい」と思うものがあれば、親自身が何かを目指して取り組んでいる姿を見せることが一番近道だという話もされていました。大きな夢を持ってほしいなら、親自身が大きな夢を持って頑張っている姿を見せればいいのです。僕も本当にそうだと思います。
少し前、関西で特に人気のあるお笑いコンビのAさんと一緒に食事をしたとき、この話になりました。
Aさんが「娘にはでっかい夢を持て、一度きりの人生大きなことやろうぜと言っているのに、この間聞いたらパティシエになりたいって言うてて」とおっしゃるのです。もちろん、パティシエが悪いわけではないけれど、Aさんは「パティシエって!」と思ったらしいのです。
僕は、Aさんがたとえば「東京でこういう冠番組を持つ」とか「世界で活躍する」という夢を持って挑戦している姿を見せればいいんじゃないですかと言いました。Aさんは「確かにー!!」とのけぞっていました。
その子にどんなワクワクを提示すればいいかというのはとても大事です。もし、どんなことにワクワクするのかがわからなければ、パティシエのどういうところに惹かれているのか、聞いてみたらいいのです。
ものづくりが好きなのかもしれないし、人に喜んでもらいたいのかもしれません。
そうした価値観に沿ったうえで、世界一のパティシエになろうとか、ジャスティン・ビーバーに指名されるパティシエになろう、いくら食べても体にいいお菓子を作れるパティシエになろうと考えたら目が輝くかもしれません。それだって「でっかい夢」です。本人の価値観に沿って「じゃあ、こんなでっかい夢はどう?」と提案してみたらいいのです。
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