かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕

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会社からすれば、会社の利益を守るため、従業員が競合となるのを防ぎたいと考えるのが通常です。一方、転職する従業員側からすれば、前職での知識や経験、人脈を生かしやすい競合会社に転職したり、同業で独立起業をしたりしてキャリアアップを図りたいと考えるケースが多いでしょう。

では、会社が従業員の競合会社への転職を防ぐ方法はあるでしょうか。

会社としてはできるだけ広く競業を禁止したいと考えがちです。ですが、すべての従業員に対して一律に、広く競業避止義務を課すような定め方ですと、無効と判断されてしまうおそれがあります。憲法では職業選択の自由が保障されているため、在職中はともかく、退職後についてまで合理的な範囲を超えて競業避止義務を課すことは公序良俗に反すると判断されてしまうからです。

裁判例の傾向としては、前職での地位が高いほど、禁止される範囲(禁止される業種や行為の範囲、義務が存続する期間、競業が禁止される地理的範囲など)が限定的であるほど、代償措置が設けられているほど、退職後の競業避止義務が有効と判断されやすいといえます。ですから、会社としては、個々の従業員の地位や職務内容に応じて、会社の利益を守るために必要最小限度の競業避止義務を定めるように気をつけたいところです。

「有効」「無効」それぞれのケース

競業避止義務が実際に裁判で争われ、有効と判断された例を紹介します。

学習塾に勤務していた講師が、前職の塾から約430メートル離れた場所で独立して学習塾の営業を始めたことについて、前職の学習塾が差し止めと損害賠償の支払いを求めた事件です。

この会社には、退職後2年間は、会社で指導を担当していた教室から半径2キロメートル以内に自塾を開設することを禁ずる、という就業規則の定めがありました。

裁判所は、学習塾業界は現に担当している講師との信頼関係が生徒の集客にとって重要な意味をもつこと、競業が禁止される地理的、時間的範囲が限定的であることなどを理由に、就業規則の競業避止義務条項を有効と判断し、講師に対して990万円あまりの損害賠償の支払いと、退職後2年間は前職の教室から半径2キロメートルの区域内で学習塾の開設や営業をしてはならないことを命じました(大阪地裁2015年3月12日判決)。

反対に、競業避止義務の定めが無効と判断された例も紹介します。医療従事者向けの人材紹介会社の従業員が、別の人材紹介会社に転職して就労したことにつき、前職会社が元従業員に損害賠償の支払いを求めて訴訟を起こした事件です。

元従業員は、退職後3年間、競業会社への転職をしない旨の誓約書を前職会社に提出していました。しかし裁判所は、元従業員がいわゆる平社員にすぎなかったこと、前職の在籍期間が1年だったことに比べると競業が禁止される期間が3年と長いこと、地理的な限定もないこと、会社が代償措置と主張する手当の金額が低すぎることなどを理由に、誓約書の競業避止義務の定めは公序良俗に反して無効と判断しました(大阪地裁2016年7月14日判決)。

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