かっぱ寿司「転職者から競合情報入手」のマズい点 楽天モバイルでもソフトバンク出身者が逮捕

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従業員の立場で、転職時に気をつけるべきことは何でしょうか。

競業避止義務は入社時に取り交わした雇用契約書や、会社が作成した就業規則に定めてあるケースが多いです。転職しようとする時点で自分がどのような義務を負っているのかを理解できるようにこれらの書類をきちんと確認しましょう。退職時に誓約書を書く際には、会社との間で認識にズレがないように確認をしておきましょう。

これまで述べた法律の理屈の話のほかに、もうひとつ大切なことがあります。それは従業員と会社との信頼関係を築いておくことです。

最低限のコミュニケーションは必要

例えば、退職した従業員が前職でお世話になった取引先に転職のあいさつ状を送ったとしましょう。従業員としては、社会人として当然の礼を尽くしたにすぎず、競業や前職を裏切る意図はまったくない場合があります。

しかし、会社側からみると、顧客に対して乗り換えを促す営業活動をしているのではないか?というように、疑わしく映ってしまうことがあります。転職した従業員にも、多かれ少なかれ会社に貢献してきた自負があるものですが、会社からそのような疑いの目で見られたことに失望し、さらに溝が深まってしまうこともあります。

職場への不満が転職理由となることはしばしばあることですが、そのような場合であっても、転職の際には、例えば転職先がどのような会社であるかを事前に伝えたり、お客様に退職(担当者の引き継ぎを含む)をどのように伝えるか、あるいは、業務の引き継ぎや情報の返却や抹消をどうするかを擦り合わせたりするなど、従業員と会社との間で最低限のコミュニケーションを図ることが大切でしょう。

とくに、同業への転職の場合には、同じ業界内で転職にまつわる情報が広まることもあります。会社の内情を知る従業員が外に出て行くわけですから、悪いうわさが立ってしまうか、良い評判が広がるかは、転職時の対応にかかっていると言っても過言ではないでしょう。立つ鳥跡を濁さずという言葉がありますが、転職の場面では、従業員も会社もお互いに節度をもって、気持ちの良い一歩が踏み出せるようにしたいものです。

岩﨑 崇 植月・岩﨑法律事務所 弁護士

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いわさき たかし / Takashi Iwasaki

横浜生まれ。首都大学東京都市教養学部法学系、慶應義塾大学法科大学院を経て、2012年弁護士登録。弁護士会や自治体での法律相談のほか、「国家戦略特区東京圏雇用労働相談センター」の相談員としてベンチャー企業の労務相談も担当する。簿記、行政書士、FP技能士の資格を取得し、経理、許認可、ファイナンシャル・プランニング、不動産等、関連分野にも造詣が深い。

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