攻めのLNG調達が東京ガスの転機に

東京ガスの村木茂副会長に聞く(後編)

村木:これらの3つの成果のほかに、せっかく海外駐在をさせてもらって英語が話せるようになったので、国際会議でスピーカーとして発信することを心掛けました。

日本には「出るくいは打たれる」的な風土があるせいか、皆さんあまりやりたがらない。私も多少は反発されましたが、買い主の立場でこの現状を変えないといけない、価格が高すぎる、ということを訴えてきました。するといろいろな国際会議に呼ばれるようになったのです。そこで発言することが効果的だと思えば、時間の許すかぎり行くようにしていました。

商社に頼らず自分たちでやる

三宅:原料部での3つの成果は、どれも規模の大きな話です。ただ、この3つのプロジェクトは、社内では上の人を説得しないといけないし、外部との折衝も大変だったと思います。どうやったら、やれるぞ、という自信を持てたのでしょうか?

村木:自信というより、アメリカに5年駐在させてもらったから、会社に何か貢献しないといけないという思いがありました。たとえば、原料を調達する交渉も、商社任せではなく、自分たちでやろうと考えたのです。今までは水際まで誰かに持ってきてもらって買うというやり方だった。それが船を持ち、上流に上がり、少しでも前へと進んで、LNGのバリューチェーンの中に自分たちのポジションをとっていきました。当然、商社には嫌がられましたけど。

三宅:東京ガスには、会社として上流に行きたいという思いがあったのですか?

村木:あったわけではないけど、このときにビジョンとして作ったのです。

三宅:社内では抵抗はありませんでしたか?

村木:時代の変化が出てきていたから、それほど大きな抵抗はありませんでした。ただ、経験がないので、本当にできるのか、という疑念はあったと思います。ダーウィンのプロジェクトで上流に入る交渉をしているとき、オーストラリアの国内向けの小さなガス田の開発に参加しないかという話があり、ウォーミングアップにちょうどいいからやろうと思ったのです。当時の財務担当の副社長が、「大丈夫なのか」と言うから、「上流は千三(せんみつ)と言って、千に三つしかうまくいきません。最近は技術が進んでいるから千三とは言わないけど、失敗することもあります」と答えたら、「10億円まででやれ」と言われました。結局、そのプロジェクトは失敗しました。

三宅:そうだったのですか。でもトライして失敗すると、上流に参画することを躊躇する雰囲気になったりしませんでしたか?

村木:失敗した理由を明らかにして、これもひとつの経験ですと言いました。次の本命のダーウィンのガス田は、相手は準メジャーだったし、ガス田の埋蔵量もわかっていたから、権益をいくらで買えるか、買ったものに対してリターンを確保できるかが勝負でした。結局、ダーウィンのプロジェクトには、2002年に参画しました。LNGの販売価格は原油価格に連動して決まるのですが、参画時の原油価格が約20ドルでそのあと原油価格が高騰したから、この案件からはものすごく大きなリターンが得られましたね。

三宅:かなり巨大な成功ですね。しかしその前の失敗を「ひとつの経験です」と言い切ったことのほうが大きい気がします。

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