攻めのLNG調達が東京ガスの転機に

東京ガスの村木茂副会長に聞く(後編)

3つの成功プロジェクト

村木 茂(むらき しげる)
1949年福岡県生まれ。白金小学校、東京教育大学付属駒場中学校・高等学校卒業。1972年東京大学工学部卒業、東京ガス株式会社入社。ダーウィン、サハリンなどの大型LNGプロジェクトを手掛ける。2000年原料部長、2004年常務執行役員、 2007年取締役、2010年代表取締役副社長執行役員、2014年から現職。

三宅:そうでしたか。意外なことに、村木さんは1996年に原料部に行くまでは、ずっと苦労されてきたのですね。

村木:そうですね、入社してからこのときまで、いい経験はさせてもらったけど、仕事では成功していないのですよ。

その後、原料部(原料である天然ガスの調達をする部署)では、8年の間に、自分なりに仕掛けて成功したプロジェクトがいくつかあるのです。今につながっている大きなものが3つあります。

三宅:その3つとは何ですか?

村木:ひとつは、自分たちでLNG船を持って運用することです。それまでも船に一部出資することはありましたが、自分たちで完全にコントロールできる船は持っていませんでした。世界中のできるだけ多くの港に入れるように、ロープをつなぐ場所など、各地の港の設備を調べたりもしましたね。つまり、将来のトレーディングのために船を持つ、という目的を持ってやっていました。そのときが最初で、その後ドンドン増えて、今回、米国LNG輸送用に発注した2隻を入れて9隻になる予定です。

三宅:2つ目のプロジェクトはどんなものですか?

村木:エネルギー調達の上流に入っていこうということで、オーストラリアのダーウィンのガス田の開発・生産からパイプライン事業、液化プラント事業までを手掛けるプロジェクトに参画しました。それにより、自社で開発から消費までのLNGバリューチェーンが完成しました。ただし、時代が変わってきたので、これからはマイナー出資で大型のプロジェクトに入るのが本当にいいのかどうか、見直す時期にきていると思います。従来のマイナー投資での参画だと、経験としてはいいのですが、プロジェクトへの影響力はありません。この点、アメリカのシェールガス開発は、個別の案件の規模は小さい分、同じ投資額でも発言力を高めるチャンスがあり、面白いことができそうだと思っています。こういったことも含めて、投資のあり方は、あらためて検討すべき課題と考えています。

三宅:今の東京ガスから考えると、ど真ん中の取り組みばかりが並びますね。では、3つ目は何でしょう?

村木:サハリンのLNGの調達です。僕は何とかロシアのガスを手に入れるべきだと思っていました。

三宅:これもど真ん中(笑)。ちなみになぜロシアだったのですか?

村木:いちばん近いからです。近いと絶対的に有利なのですよ。それにロシアの天然ガスの埋蔵量は世界一です。日本としては視野に入れるべきでしょう。それを原料部に行ってから、ずっと追いかけていました。何度もサハリンに行って、州政府の幹部とかなり緊密にディスカッションをしました。サハリンには2つのプロジェクト(サハリンⅠとⅡ)がありましたが、「サハリンⅠとⅡの2つの競争ではない、世界との競争だ。早く判断したほうがいい」とロシア側の女性の局長に話していました。

結局、2002年に、われわれが最初にサハリンのLNGを調達する契約を結びました。サハリンにとっても、ロシアにとっても、もちろん東京ガスと日本にとっても大きなことだったと思います。州知事からは「名誉市民にしてやる」と言われました(笑)。

三宅:1998年に私がエネ庁の国際部門にいた頃は、サハリンのガスはなかなか動かないので、同じロシアでもむしろ内陸のガス田に着目を移しつつありましたが、最後は村木さんが動かしたのですね。 

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