なぜ、セダン市場はいつも「ベンツ一強」なのか? 6モデル購入者分析で見えた各社のブランド像

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「顧客構成」に加えて「メーカー再購入意向」のデータも見てみよう。「あなたが次回、車を購入するとしたら、次も同じメーカーから購入したいと思いますか?」という質問に対し、「確実に同じメーカーから購入したい」と答える人の割合である。結果は以下の通りで、メルセデス・ベンツ、レクサスのスコアが3割近くと高かった。

一般に、このスコアは高ければ高いほどよい。メーカーが、継続的に収益を確保しやすくなるからだ。

スコアを高めるには、「スイッチ」よりも「2連続リピーター」を、「2連続リピーター」よりも「3連続リピーター」を多く確保することが有効である。メーカーによってばらつきはあるが、「3連続リピーター」は、「スイッチ」よりもメーカー再購入意向が約2.5~5倍も高い結果が出ている。

ただし、前述の通り、レクサスは販売開始から約16年しか経っていないため、「2連続リピーター」と「3連続リピーター」のロイヤルティ(メーカーへの信頼や愛着)の差はあまりないといえる。言い換えれば、「2連続リピーター」であっても、「3連続リピーター」並みのレクサスへの愛着や満足、乗り続けたい気持ちを持っているということだ。

「生涯顧客」は圧倒的にメルセデス・ベンツ

最後に、ここまで見てきた「顧客構成」「メーカー再購入意向」を使って、「生涯顧客率」という指標も見ていきたい。具体的には次の5つに振り分けている。

順当に行けばそのメーカーの車を今後も購入し乗り続けてくれるユーザーを「生涯顧客」、それに続くユーザーを「準生涯顧客」と定義。この先の意思決定はまだ「ニュートラル」な人、そしてこのままでは「離脱予備軍」な人、最後に「次期離脱」の5分類である。メーカーとして確保すべきは、もちろん「生涯顧客」だ。

グラフを見てみると、メルセデス・ベンツの「生涯顧客」が約2割と多い。「準生涯顧客」まで広げれば、半数を超えており、現在のメルセデス・ベンツの強さが見て取れる。

「2連続リピーター」「3連続リピーター」の数では、メルセデス・ベンツとあまり差がないBMW、アウディを大きく引き離す格好だ。

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生涯顧客の多さは、顧客基盤の強固さを表す。顧客基盤が強固であれば、自社ユーザーをしっかりと守ることで他社流出を防ぎ、他社からスイッチさせるための活動に資源を割くことができる。

そうなれば、リピーターが増えると同時に新たなユーザー(スイッチ層)を獲得でき、彼らがリピーターへと成長する好循環が生まれ、継続する。今回は、4社のセダンを対象に分析を行ったが、改めてSUVについてもデータを見ていきたい。

三浦 太郎 インテージ シニア・リサーチャー

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みうら たろう / Taro Miura

北海道大学大学院理学院卒業後、インテージ入社。自動車業界におけるマーケティング課題の解決を専門とし、国内最大規模の自動車に関するパネル調査「Car-kit®」の企画~運用全般に従事。

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