ソニーが圧倒的な高収益体質に大復活できた本質 エレキ地位低下の一方、グループ6事業を「掛け算」
「(統括会社の)ソニーグループは連携強化に向けて、すべての事業と等距離で関わる」。吉田憲一郎社長は5月の経営方針説明会でこう宣言した。
この変化は、ソニーにおけるエレキ事業の地位低下を反映したものでもある。この10年でソニーの全体の売上高に占めるエレキ事業の比率は、約6割から2割へと大きく下がった。ただ、組織変更にはこうした客観的事実以上の意味がある。
吉田社長は2019年1月、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というフレーズを、エレキ事業にとどまらないソニーグループのパーパス(存在意義)と定義した。それぞれが独り立ちできる6つの事業群が1つの会社に集まっているのはなぜか。それを説明する概念だ。
6つの事業をまとめ上げる「感動」
6つの事業が手掛ける事業の幅は広いが、これらをまとめ上げる上位概念が「感動」だ。それに向かって、フラット化した各事業を「掛け算」していく。それが今のソニーの戦略である。
各事業同士の連携はすでに業績に結実しつつある。例えば、ミラーレスカメラ市場で圧倒的なシェアを誇る「α(アルファ)」シリーズは、その背景にソニーが持つ優れた半導体技術がある。ソニー損害保険では、AI(人工知能)技術を使った商品が人気だ。
新規事業も「掛け算」が基準になっている。代表例が2020年にアメリカ・ラスベガスで行われた展示会「CES」で発表された電気自動車「VISION―S(ビジョンエス)」だ。2018年1月にイヌ型ロボット「aibo」を12年ぶりに復活させたAIロボティクスグループが手がける新プロジェクト。半導体事業で培ったセンサー技術のほか、スマートフォン「Xperia」の操作性や通信技術、得意のオーディオ技術を生かした車内空間作りなど、ソニーの技術がこれでもかと詰め込まれている。