実戦!地頭力(下) 誰も知らない「新市場」をどうやって発見するか 地頭力を鍛える

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 面接で知りたいのは、「学園祭で実行委員長をした」とか「世界中を放浪した」といった華やかな経験ではない。「なぜそのような行動をとったのか」を繰り返して問うことで、過去の経験を頭の中でどう解釈して、それを次にどのように応用できるかという学生の「抽象化思考力」を見定めているのだ。

入社後は「カスタマー(読者)とクライアント(営業取引先)のことをどこまで理解しているのか」をつねに問いかけられる。顧客を正確に理解せずに仮説を立てても間違えるだけだ。そして顧客に対する理解とは事実の収集に限らない。事実という”点”を増やすことから生まれる仮説力だ。

たとえば社員募集の広告営業で、中小企業の経営者と面談するときには、社史沿革や社長の経歴を見ながら、この社長は30歳のときにどんな仕事をしていたのか、その頃の会社の状態はどのようなものだったかを当時の世相と照らし合わせながら考えてみる。これだけでも社長の社員募集への思いが見えてくる。当然提案の内容は深まるはずだ。このような発想法が「フレームワーク思考力」である。これを研修やOJTを通じて徹底的にたたき込む。

地頭力のベースとなるのは、「知的好奇心」である。「知りたい」という欲求からすべての思考が始まるからだ。ただ、「リクルートでは少し違うかな」と、同社人事部開発グループの木村秀之ゼネラルマネジャーはつぶやく。思考の動機は、知的好奇心だけとは限らない。「顧客の期待に応えたい」「社会を変えているという実感を味わいたい」「自分の存在感を味わいたい」といった人間の感性が原動力なのだ。そのためには社員には分不相応な仕事を与えることで責任感を意識させるし、組織を小さくすることで社員一人ひとりの当事者意識を高めている。

個人の業績にも徹底的にこだわる。「達成率99%は達成率ゼロに等しい」(木村氏)という厳しさだ。もっとも、同社の社員はこうした競争環境を楽しんでいるようにも見える。右の写真はリクルートのオフィス風景。つい最近、東京駅前の新社屋に引っ越したばかりだが、早くも天井から垂れ幕がいくつもぶら下がっている。垂れ幕には「○○さん、1月目標達成」といった表現が目につく。目標を達成するとクス玉が割れて、みんなで祝福する。

現実の世界では、合理的な思考法だけでビジネスが成功するとは限らない。感性の力と地頭力の両方を組み合わせることで、最大限の効果を発揮できるのだ。

取材協力(敬称略)
ユナイテッドアローズ オデット・エ ・オディール部クリエイティブディレクター・吉澤尚美、ユニチャームC&F事業部長・木内悟、リクルート人事部開発グループゼネラルマネジャー・木村秀之

(週刊東洋経済編集部 撮影:吉野純治、尾形文繁、風間仁一郎、鈴木紳平、田所千代美、今井康一、山内信也)

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