実戦!地頭力(下) 誰も知らない「新市場」をどうやって発見するか 地頭力を鍛える

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 テレビや棚など家具のすき間に入り込んだほこりを取るハンディワイパー「ウェーブ」は、同社が得意とする商品の一つ。その生産量を予想する際にも、消費者はシートが真っ黒になるまで使うのか、定期的に取り替えるのか、チーム全員で消費者の使用方法について仮説を立てる。仮説とアンケート調査の結果が異なれば、その理由を必ず検証する。アンケートの質問の仕方が間違っていることもあるからだ。次回の仮説の精度を高めるには不可欠の作業だ。

そんな木内氏が「ウェーブ」の誤算の例として挙げたのが、昨年の年末商戦。ユニ・チャームがほぼ独占していた市場に、花王が07年8月に「クイックル」ブランドでハンディタイプを投入したのだ。

書き入れ時の年末を前に、「シェアの奪い合いに発展するのは必至」(木内氏)であり、ある程度シェアが取られ、ウェーブの売り上げは落ちると予測した。ところが、花王が新製品を投入後、市場規模が3倍に膨らみ、ウェーブの売り上げは少しも落ちなかった。それどころか、店頭から商品が姿を消し、工場をフル稼働しても生産が間に合わない状態に陥ったのだ。

「花王の参入でハンディワイパーの注目度が高まるという仮説は考えもしなかった」。うれしい誤算の原因を木内氏はこう分析する。ユニ・チャームは紙おむつや生理用品といった成熟した生活必需品市場を主戦場としており、強力な新商品が発売されると、シェアの取り合いになる。この経験から、ハンディワイパーの場合も同様の現象が起こると考えた。ところが、実は市場は未成熟であり、拡大する余地は十分にあったのだ。

「計画を立てるとき、消費者のほうを見ず、ライバルばかりを意識してしまうと、実態とかけ離れた計画に陥りやすいのです」と、木内氏はあらためて振り返る。逆説的に言えば「健全な付加価値競争が、仮説以上の可能性を切り開いた」(木内氏)ことのよい一例といえるだろう。

部下の顧客志向力はどうすれば高まるか

あらゆる業界に多彩な人材を輩出するリクルートは、ある意味で地頭の宝庫ともいえる。地頭力のある学生を採用するために、面接では過去の経験をひたすら問い続けることで、学生の地頭力を見定めるという。

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