成城石井「ピスタチオスプレッド」激売れの舞台裏 発売1年経っても売れ続けている理由はどこに

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思い切った価格設定は、大ヒットにつながった。発売と同時にスプレッドの噂は広がり、予想の1.7倍売れる好調な滑り出しとなった。そこへテレビで紹介されて、人気が爆発。1人1個の販売制限をかけたが、発売1カ月で欠品する事態に。すぐに追加のオーダーをかけたものの、2カ月間店頭に並ばない状態になるほどだった。

坪井課長は、ピスタチオスプレッドの魅力について、「味と色です。香ばしくて濃厚で、香りが独特でクセになる」と説明する。「売り場でイチゴやブルーベリー、アプリコットなどのジャムと一緒に並べたときに、緑色がないので目立つ」。

目新しい食品を求める人が増えている

確かにピスタチオには、個性的な香りと味、色がある。今までなかったタイプの食品だからこそ、今回ヒットしたのだろう。「ナッツの女王」と言われるピスタチオは、地中海沿岸の砂漠が原産地。やがてヨーロッパにも広がったが、アラブ系、アルメニア系、トルコ系の人々だけに愛される期間が長かった。日本でも、以前はあまり知られていなかった。

緑色が特徴的な「ナッツの女王」ピスタチオは、健康的という観点から世界でも需要が増えている(写真:horiy/PIXTA)

成城石井のピスタチオスプレッドには、品質が安定しているイラン産のピスタチオが使われている。現在でもピスタチオのイランのシェアは世界一だ。栄養価も高く、食物繊維、ビタミンB1、カリウム、鉄、銅などが多い。

最近、スパイスカレーやジョージア料理のシュクメルリ、中東調味料のハリッサなど、クセの強い味が、次々と流行している。現地で体験してきた人や日本の外国料理店などで世界各地の味に親しむ人が増え、目新しい味を求める好奇心旺盛な人が増えている。もはや、日本人はシンプルな味に飽きたらず、よりスパイシーな味も好むようになっているのである。

また、緑色は日本人が長く親しんできた食品の色であり、近年流行する食にも多い。最近存在感を増している抹茶味のスイーツはもちろん、2016年頃が流行のピークでその後定着したパクチーも緑。3年前に人気が爆発したチョコミントのミントカラーも、緑のバリエーションの1つ。スモーキーなピスタチオカラーは、新鮮かつ親しみやすい新しい緑色の食品として受け入れられているのではないだろうか。

成城石井では、新しいピスタチオ加工食品を探し、導入したいと意欲的である。チョコミントがそうだったように、ピスタチオもやがて定着し、数ある緑色のフレーバーの1つになっていくのだろう。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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