辣腕作家が見たアメリカが「コロナに負けた」必然 マイケル・ルイス氏が失敗の理由に切り込んだ

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政権が交代したり、担当者が異動したりすることで、後任は前任者とは違うことをしたくなるし、自分の地位を守りたくなる。これは人間組織の宿痾(しゅくあ)であろうか。

日本がまとめていた「提言」

これは決してアメリカだけのことではないだろう。実は日本も、「新型インフルエンザ」発見の際の混乱を教訓に、民主党政権時代の2010年、厚生労働省が報告書をまとめていた。ここには、たとえば、次のような提言がある。

「国家の安全保障という観点からも、可及的速やかに国民全員分のワクチンを確保するため、ワクチン製造業者を支援し、細胞培養ワクチンや経鼻ワクチンなどの開発の推進を行うとともに、ワクチン生産体制を強化すべきである。併せて、輸入ワクチンについても、危機管理の観点から複数の海外メーカーと連携しつつ、ワクチンを確保する方策の1つとして検討していくべきである」

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日本もコロナの感染拡大が始まるより10年も前に、こう提言されていたのだ。さらに報告書は、次のように提言を結んでいる。

「新型インフルエンザ発生時の危機管理対策は、発生後に対応すれば良いものではなく、発生前の段階からの準備、とりわけ、新型インフルエンザを含む感染症対策に関わる人員体制や予算の充実なくして、抜本的な改善は実現不可能である。この点は、以前から重ね重ね指摘されている事項であり、今回こそ、発生前の段階からの体制強化の実現を強く要望し、総括に代えたい」

本書を読んで、「アメリカはダメだなあ」などと他人事のようには言えないことが、ここからわかるだろう。

本書の中で、ブッシュ大統領が、100年前のスペイン・インフルエンザの流行を描いた本を読んで危機管理体制の不備を悟るというエピソードが出てくる。パンデミックに関する堅苦しい報告書よりは、ノンフィクション作家が優れた作品を残しておくことが、失敗を繰り返さないために効果的であることを、本書は教えてくれる。

本書はたしかに「失敗」の物語を紡いでいるのだが、ここから得られる教訓は大きいだろう。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶應義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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