東レ・炭素繊維50年目の飛躍、米欧日の航空機主材料に《戦うNo.1技術》 根気強い開発が実を結んだ!

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「小型のほうが難しい」自動車向けにはあと数年

中型機ボーイング787の基本形は210~250席。現時点での最多量産機種は、787より小さい100~200席ほどのボーイング737級の航空機だ。だが68年運航開始のボーイング737にはもともと構造材の1%以下、0・1トンの炭素繊維複合材料しか使われていない。東レとしても当然、最多量産機種への納入を果たしたいところ。

だが、意外かもしれないが、機体材料のアルミ合金を炭素繊維複合材料で代替するには、小型機のほうがより難しい。小型機は主翼や胴体、その接合部などが小さく、飛行中の振動などを吸収する余地も小さいため、その影響を分析するシミュレーション計算や実験、そして設計をより緻密に行う必要があり、膨大な手間がかかるためだ。

実際、70~90席の小型機MRJでは、当初は機体軽量化のため主翼や尾翼に炭素繊維複合材料を使うはずだったが、09年9月の機体仕様確定の際、主翼材料を炭素繊維複合材料から金属へと変更している。

「小型のほうが難しい」という点は自動車向けも同じ。

4月28日、東レは独ダイムラーと炭素繊維複合材料製の自動車部品の共同開発契約締結を発表した。東レ独自のハイサイクルRTM成形技術により、メルセデスベンツの乗用車へ部品を供給しようというものだ。

日覺(にっかく)昭廣副社長(6月24日の株主総会で社長就任予定)は語る。「自動車に炭素繊維複合材料を使えば、軽量化による燃費向上と排出ガス削減ができる。ただ、いくら環境にいいと言っても、現在の価格水準では使えるのは高級車のみ。低コスト化を進め、高級車以外のクルマに普及させるには、あと4年から5年は必要」。その実現が、炭素繊維世界首位の東レに課された使命である。

■東レの業績予想、会社概要はこちら

 


(石井洋平 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年6月5日号)

 

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