幸せな組織をつくれる人々と不幸にする人々の差 メンバーが周囲に対してどんな影響を与えるか

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われわれは大量の3次元の動きのデータを収集し、人の行動をこのように「1」と「0」の巨大なシークエンスのデータとして表現して、データベースに蓄積した。あわせて、幸せや不幸せを数値化する質問紙の尺度を人ごとに収集した。「今週、幸せだった日が何日ぐらいありましたか」とか「今週、孤独だった日が何日ぐらいありましたか」というような質問により個人の主観的な幸福度を数値化するアンケート結果である。そして、人工知能技術(機械学習)を使って、幸せな人や集団、幸せでない人や集団に特徴的な「1」と「0」のシークエンス(身体運動の配列)がないかを調べたのである。

その結果、幸せな集団に普遍的に見られるシークエンスの特徴や、逆に幸せでない集団に普遍的に見られるシークエンスを発見することができた。いわば「幸せの配列」や「不幸せの配列」があることを発見したのである。

身体運動から幸せを9割以上の精度で推定

まず、データを解析すると、人間の無意識の動きのシークエンスに、普遍的特徴があることがわかった。それは「身体の動きは、動き続けるほどに止まりにくくなる」という普遍性である。動きを表す「1」が続くほどに、止まることを示す「0」に転じにくくなるのである(これについては以前に寄稿した記事でも紹介した「会わないでいるとますます会いにくくなる理由」2019年10月9日配信)。

大量のデータを集めると、この1から0に転じる確率は、1が持続した時間の関数として、きれいな数式に従うのだ。

驚くべきことに、この現象はヒトだけでなく、マウスの身体運動でも見られ、まったく同じ数式に従う。動物が健全な状態にあれば、この「1」が「0」に転じるタイミングは、無意識のうちにこのような普遍的な法則に支配されるのだ。

われわれは自分の身体の動きは、自分の意志でコントロールしていると思いがちだが、データが示す事実から、無意識レベルでは動物としての基本的な法則性に強く支配されていることがわかる。膨大な人間行動のデータから、この法則が普遍的に成り立つことが見出されたのだ。

ところが、不幸でストレスの多い集団では、1から0に転じる確率が、この普遍法則からわずかに短めにずれてくるのである(詳しくいえば、「各メンバーの動きのシークエンスが法則から乖離している程度を表す指標を、集団内で平均した値」が大きくなると、「各メンバーの主観的幸福度を質問紙により定量化したものを、集団内で平均した値」が、統計的に低くなる)。マウスにも見られる身体運動の普遍的な分布に沿うことが「幸せで生産的な組織に普遍的に現れる無意識の身体運動の特徴」になっていたのである。

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