自民伸び悩んだ都議会選、健在なり!「小池劇場」 与党の都民ファーストは第1党うかがう大健闘

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前回都議選では選挙戦最終日の街頭演説で聴衆の激しいヤジにいら立った当時の安倍晋三首相が、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と発言し、それが自民劣勢を加速させた経緯がある。しかも、今回は自民各候補が「首相の応援演説で票が減るのでは」(新人候補)との不安を漏らしていたことも「菅隠し」につながったとされる。

その一方で、麻生太郎副総理財務相が政権を代表する形で積極的に街頭演説を展開した。告示日の演説では、過労で休養中の小池知事について「自分で撒いた種でしょうが」と発言して大炎上。自民党の二階俊博幹事長が「(発言は)問題外でコメントしない」と苦々し気に語ったことも、自民候補の足を引っ張る結果となった。

菅首相は投票が進む4日午後には親しい選挙プランナーと会談し、各メディアの出口調査の結果も踏まえ、「結構、都民ファが取るみたいだね」と他人事のように語ったとされる。その後、菅首相は自民党本部に顔を出すこともなく、午後6時前には都内の宿舎に戻った。

菅首相は「謙虚に受け止める」

開票から一夜明けた5日午前に官邸で記者団のインタビューに応じた菅首相は、「自公で過半数を取れなかったことは謙虚に受け止める」と神妙な表情で語った。小池知事が支援した都民ファが公約に五輪無観客を掲げたことについても、「選挙の結果にかかわらず、最終的には5者協議で決まる」と従来の立場を強調しただけだった。

菅首相周辺は投開票を前に「自民圧勝を前提に『勝利談話』を用意していた」とされるが、「結果的に幻の談話に終わった」とみられている。

今回の都議選結果を受けて、自民党内には「地方選挙と国政選挙は別」(自民執行部)との指摘があるが、「菅首相のもとで衆院選を戦うのは危険だ」(若手)との声も広がる。菅首相が「切り札」とするワクチン接種も、供給不足での混乱が目立っている。

五輪開幕前後からのコロナ・五輪政局の展開次第で「菅首相が選挙の顔にふさわしいかどうかが決まる」(閣僚経験者)ことになりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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