1畳の箱で「子連れ外出助ける」ベンチャーの正体 可動式ベビーケアルーム「ママロ」誕生の裏側
他社に継続してもらうことも考えたが、2015年に自分で買い取って起業した。起業したものの、スポット件数は1万8000件で伸び悩んだ。
「ユーザー数は増えているのに、授乳室情報は増えなくなった。たぶん日本国内ではこれがすべて。毎年80万~90万人赤ちゃんは生まれるのに、授乳室は足りていない。見つけられないからBaby mapの情報は必要。しかし、本質的な問題を解決するには、Baby map自体が必要ない世の中になることではと思った」(長谷川氏)
授乳室がないなら作ってしまおう!
トイレをわざわざ事前に探してから出かけることはない。授乳室もトイレと同じようにあることが当然の世の中にしたい。ないなら作ってしまおうという発想の転換だった。
2016年夏からアイデアを練り始め、1年後に試験導入を開始した。
といっても、長谷川氏を含め当時の社員4人ともソフトウェアを作った経験はあるが、ハードを作るのは“ド素人”。しかも、自己資金でアプリを買い取って起業したため、現金に余裕はなく、開発のために新しく人を雇うこともできない。1つずつ試行錯誤しながら、設計、強度など手探りでの開発となった。
発売以降、ずっと右肩上がりで拡大してきたが、コロナ禍による最初の緊急事態宣言で商談がストップした。そもそも店舗が閉まっていたり、開いていてもコロナ対策が優先だったり、複数人でスペースを共有する授乳室の場合、感染対策として閉めているところもあった。「そういう意味で、ママロは家族だけの空間を作ることができるので安心」と長谷川氏。今年の初めごろから徐々に需要が戻り出したそうだ。
長谷川氏は「施設にとっても導入時の負担が少ないほうがいいので、将来的にはママロの中に設置されているモニターを利用して広告収入で本体代金を賄いたい」と話す。普及することで、原価を下げることもでき、お母さんたちにも還元できるということだ。
内閣府の国際意識調査で日本人の6割強が「子育てしにくい国」だと回答している。産後うつや孤独な子育てなど、近年母子を取り巻く課題がクローズアップされている。お母さんと赤ちゃんがストレスなく外出できるだけで、リフレッシュできることもある。少子化だからこそ、子育て世代を優しくサポートするような企業の存在感が増してくるだろう。
長谷川氏も「0〜1歳の育児はもっとも大変な時期。しかし、子どもの成長に合わせて必要とするものも情報もアップデートされていくし、忙しい中わざわざ不便に対して声を上げない。でも、だからこそ『大変すぎてもう嫌』と思わなくて済む社会インフラが必要だと思う」と力を込める。
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