日本の「児童虐待対応」世界から取り残されるワケ 「警察との情報共有」が現場を苦しめている

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児童相談所のみで児童の一時保護が判断できることが問題視されています(写真:metamorworks/PIXTA)

コロナ禍で家族が家にいる時間が増えたせいもあるのでしょうか、2020年の児童虐待の検挙件数は2133件と、過去最高となりました(警察庁生活安全局少年課「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」による)。

児童虐待などさまざまな理由で、一時的に親と分離させて子どもを保護することを一時保護といいます。日本は「子どもの権利条約」締結国であり、その理念は児童福祉法第1条にも書かれています。この「子どもの権利条約」には、「親と子は司法関与なしには分離されない」となっています。

現在のわが国は、福祉機関である児童相談所のみで児童の一時保護が判断できることから、一時保護における司法関与について検討がされています。2020年9月に設置された厚労省の専門委員会「児童相談所における一時保護の手続等の在り方に関する検討会」でも導入が提言され、4月には第8回検討会が開催されたところです。

しかしながら実務を行う児童相談所へのアンケート結果からは、約7割が導入反対という結果です 。この制度は世界基準に適した改革のはずですが、なぜ現場(児相)では反対が多いのか、その理由と検証をして今後のあり方について述べたいと思います。

「警察との情報共有」が現場を苦しめている

大きな児童虐待の事件が起こると、その分析として警察や市町村と児相間などの情報共有が足りなかったからだという意見が出ます。ただし、これを鵜呑みにするのは要注意です。なぜなら情報共有をしている自治体とそうでない自治体で死亡率等に差があるか、情報共有前後の分析などでの評価分析は皆無なのです。

それにもかかわらず、警察との情報共有が全国的に進みつつあります。児相への児童虐待通告数の半分以上は警察からです。警察からの通告書はざっとしか書かれていないものが多く、文末は警務要鑑等にある判で押したような文言ばかりです。つまり警察において、児相がかかわるのが真に必要なもののみ通告するなどの分析はされておらず、全数が児相に来る状態です。

しかし警察から通告があった場合は児童相談所のデータ(予後を含む)を警察に報告しなければなりません。警察はざっとしたデータしか提供せず、本当に欲しいそのビッグデータの内容等(特に児相側としては例えば住民票や戸籍などに記載されていない人との関わりなどの相関図が欲しい)はもらえず、筆者の調査によると、おおよそ全数の17%程度しか参考になる情報がもらえていません。

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