日本の「児童虐待対応」世界から取り残されるワケ 「警察との情報共有」が現場を苦しめている

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一方、児相側は調べた結果や対応まで全ケース(100%)を警察に報告する義務があります。これは情報共有といえるのでしょうか。しかも虐待通告の個人情報は各自治体の個人情報保護条例等で保持期間があり、通常その期間が終わると原則抹消するのですが、警察にわたった情報がそのような処置をしているのかは不明です。警察の下部機関ではないかと職員がげんなりするのももっともです。

さらに大きな問題は業務における連携です。住民が児相に通告しても、児相は虐待だけでなくさまざまなケースを担当し、面接や訪問等が分刻みで入っていますので、すぐ該当児童宅に行けることはまずないです。そうすると住民は業を煮やし110番に電話し対応を求めます。情報共有をしている自治体の警察は、パトカーに過去の通告歴や動向などが一瞬にして表示され、すぐ対応できます。

その結果、児相が遅れて現場に行くと対応が終わっており、警察から「児相は遅い、仕事をしているのか」と怒られることが続いていて、職員の士気が低下しています。

このような現状や世界の実情を鑑み、わが国は他国のように情報共有や連携よりも役割分担が必要であり、すでに虐待通告の半分以上が警察なので、通告受け付けや介入を司法(警察)で行うべきと、最新の研究においては言われているところです。

一時保護の家裁関与に児相が反対する理由

筆者の調査結果から、児相の意見は次の2点に集約されそうです。

・ ただでさえ職員不足なのに、一時保護するため家裁に提出する資料作りが煩雑化し、子どもの安全確保に間に合わない可能性がある。

・ 他の家裁の案件(親権停止や親が同意しない施設入所など)のように、家裁が納得するまで資料を作り続けるしかならず、事務負担が大きい。

つまり、これまでの警察や家裁と児相との関連性から反対しているのです。児相は被害者意識に陥っています。しかしながら他国を見て、児童虐待の受け付け・介入・保護・措置を1つの福祉機関が行っていることはありえません。子どもの権利条約に反していながらそのシステムを改善させず、司法は「児童相談所の支援」など発言しているのです。

他国では、福祉機関のデータだけでは一方的すぎるので、司法(裁判所)が「主体的」に福祉機関、親(弁護士)、子どもを調査し、その結果として保護命令や治療プログラム受講命令等を出しているのです。児相と裁判所が独立し、裁判所が自ら動いてデータを集め判断するのです。児相は裁判所の下請けではありません。

よって、わが国では以下のようにすべきです。

1. 受け付け・介入:警察

2. 判断:家庭裁判所

3. 支援:児相

現在、これら1~3をすべて児童相談所が行っているために、不登校、引きこもり、非行、発達障害など各種障害のケアなど、本来行うべき業務を児童相談所が十分に対応できず、子どもや家族に必要な支援ができないことから、結果として社会全体に長期的影響を及ぼしているのです。本来これらの判断(非行も措置がある)も、裁判所が主体的に行うべきです。

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