『ローラーガールズ・ダイアリー』--見えない強さの経済《宿輪純一のシネマ経済学》
この作品は、「ローラーゲーム(Roller Game)」をテーマにした典型的なスポーツ自己実現型感動系さわやか映画である。しかし、決してウザくない。
「ローラーゲーム」とは、室内に設置された競輪のような傾斜のあるトラックで、ローラースケート履いた選手が競うゲーム。得点する権利のあるスケーター(ジャマー)が相手チームのメンバーを抜くとポイントになる。格闘技的な要素も含まれ、プロレス的な盛り上がりがある。
この「ローラーゲーム」であるが、中年以上の方にとっては「懐かしい」と声を上げたくなる言葉ではないか。実は「ローラーゲーム」は、新しいスポーツではない。米国では1960年代に流行し、70年代には(関東地方では)東京12チャンネル(現:テレビ東京)がゴールデンタイムで放送していた。筆者の記憶ベースでは、“つねに”対戦は「LAサンダーバーズ」と「東京ボンバーズ」であった。そして「ヨーコ」という女性スケーターがスターだった。
本作品の原題は「Whip It」であるが、手で引っ張って後方のスケーター(ジャマー)を前方へあおり出す技「ホイップ」から取ったものである。スケーターのスピードが増し、見せ場を作る技である。
テキサスの田舎町に住む主人公の17歳のブリスは、母親からいつもミスコンに出場するように要求されて、うんざり。そんな窮屈な生活を送っている時に、(お約束であるが)「ローラーゲーム」と出合う。年齢をごまかして入団し、練習をこなして成長し、頭角を現していく……。そして、母親との対決の後……。スポーツ映画にある爽快感が十分味わえる。
ちなみに、この主人公ブリスを演じるエレン・ペイジは『JUNO/ジュノ』において、16歳で妊娠した女子高生を熱演。そのかわいい演技で人気を博し、アカデミー主演女優賞にもノミネートされた。